| | | | | | あおやま・あゆみ | | あいち小児保健医療総合センター内にある「子ども事故予防ハウス」で安全教育を担当するほか、託児グループや保育園の父母会などを対象に事故予防の講演・研修を行う。 | | | | ●発達とともに変わる事故 生後6カ月ごろから誤飲・窒息の事故が急増 | | 子ども(1〜14歳)の死亡原因の第1位は、病気ではなく不慮の事故だそうですね。 子どもの事故には、どのような傾向がありますか?また、事故はどのようにして起きるのですか? | | 死亡に至る不慮の事故は、0歳児では不慮の窒息が第1位で圧倒的に多く、1〜14歳では各年齢とも交通事故が第1位で、その割合は年齢とともに高くなっています。次いで多いのが、どの年齢でも転落や溺れの事故です。この傾向はずっと変わらず、子どもによく起きる事故は、年齢によって決まってくると言えます。 生後6カ月ぐらいになると、手に物を持って口に入れるようになり、そうすると誤飲・窒息の事故が急激に増え、1歳6カ月ぐらいまでは多く発生しています。口に入れた物が食道に入れば誤飲、気道に入って詰まってしまうと窒息の事故になります。 誤飲はタバコが多いですが、他には小さなおもちゃ類やボタン電池・クリップなどさまざまです。ピーナツを口に投げ入れて食べていて、気管に入ってしまうケースもあり、そうした事例に出合うと、行儀よく食べるといったマナー教育には、安全教育の意味も含まれている気がしてなりません。また、転落の事故は、ベランダに踏み台になるような洗濯カゴがひとつあれば起きますし、溺れの事故も、小さい子は手をついて顔を上げる動作ができないので、洗面器に10センチの水があるだけで起きてしまいます。 事故が起きる場所は、小さいうちは家庭内もしくは屋内が多く、大きくなるにつれて公園・店舗・駐車場などへと範囲が広がっていきます。家庭内の事故に限ると、1歳6カ月まではほとんど居間で発生し、それ以降は台所・階段・浴室などへと場所が広がっていきます。 | | ●家庭で起きやすい事故 花火などでのやけどや手挟み事故にも注意 | | 家庭の内外で起きやすいその他の事故やその背景、 そして事故が起きてしまったときの対応について教えてください。 | | 命に別状がなくても、跡が残ったり入院しなければいけないのがやけどです。赤ちゃんを電気カーペットに寝かせていて低温やけどを起こしたり、ポットや炊飯器の湯気が気になり手を出してやけどをしてしまったり。寒い時期は、暖房器具によるやけどに注意が必要です。屋外に出る年齢になると、花火やバーベキューが原因になる場合も多いですね。 家庭内でのちょっとした事故として、手挟み事故がありますが、今の玄関ドアやサッシは重くて頑丈なので、骨折してしまう危険性があります。また、子どもは小さいところや狭いところが好きなので、コンセントに何かを入れたり、弟・妹の耳や鼻に物を詰め込んでしまうケースもあります。 誤飲事故が起きやすい背景としては、最近は特に小さい子が口に入れやすい物が、身近にあふれているからでしょう。携帯電話のストラップや子ども服のファスナーの先に付いた飾りなど、子どもの目を引く小さくて色のきれいなグッズがたくさんありますからね。
もし、自分で処置できない事故が起きてしまったら、医師に見せるまでの対応をできるだけ早くすることが大切です。事故が起きると慌ててしまって、電話番号が思い出せないことがあるので、119番と家族のかかりつけの病院など、連絡先の番号を必ず電話の近くに貼っておいてほしいですね。 |
| ●事故を予防するには 親が近くにいても事故は起きてしまうから… | | 子どもの事故を予防するには、どうすればいいですか? | | 子どもの事故は、そばに誰かいれば起きないと思いがちですが、調査によると、誰かいてもいなくても事故の重症度には差がないという結果が出ています。だから、特に子どもが小さいうちは、家庭内を事故が起きにくい環境にすることが大事になってきます。そのモデルとしてつくったのが「子ども事故予防ハウス」です。実際の家庭環境を再現したハウスを用意して、家庭内で多い事故、重症度の高い事故の予防のアイデアを紹介しています。 | 事故予防対策は、子どもの発達と追いかけっこなんですね。というのは、事故が起きるのは、昨日までできなかったつかまり立ちが今日はできるなど、親の認識を超えて子どもが発達するから。そこで、月齢・年齢によって起こる事故は予測できるので、子どもの発達段階のひとつ先の予防策を講じればいいわけです。たとえば、まだ指でつまむ力がない子に対しては、シャンプーボトルのプッシュレバーを押せないように、ボトルの首を洗濯ばさみで挟むなど、身近にある物や予防グッズを活用しながら。 事故予防の心がまえとしては、子どもの特性を知っておくことも大切です。たとえば、交通事故が起きやすいのは、子どもは大人に比べて視野がかなり狭く、近づいてくる車が見えないからなんです。また、その子の好きな遊びに応じて、危険を予測して対策を立てることも必要でしょう。以前、水遊びの好きな子が、トイレの便器で水遊びをしていて溺れかけたことがあり、そういう子の場合は、便器のふたが簡単に開かない工夫をしたりということですね。 事故が起きないよう子どもに注意するときには、言葉で言うだけでなく、手で大きなバツをつくりながら「危ないからダメ」と言うなど、目にも訴えると伝わりやすいと思います。 | | | | | | 乳幼児が誤飲してしまった場合の対応は、どのようにすればよいでしょうか。 | | | 誤飲したものに応じて基本的に次のような心がまえをもち、 あとの処置は専門家にまかせてください。 | | | ●大人の薬 薬の中でも血圧の薬や精神安定剤などの誤飲は危険なので、まずはきちんと管理しましょう。また、風邪薬ぐらいで少量であれば様子を見て、心配な場合は医師に相談してください。 ●タバコ 食べた量が2cm以下ならそのまま数時間、様子を見て、変わったことがなければ心配ないと思います。それ以上の量の場合やタバコの入った液体を飲んだ場合は、吐かせて病院へ連れて行ってください。 ●トイレ洗剤など シャンプーや洗剤類の中では、トイレ用洗剤など強い酸性やアルカリ性のものが危険です。吐き出させると、再度、食道などを傷つける可能性があることを知っておいてください。 ●ボタン電池、小さなグッズ ボタン電池は、まずレントゲンを撮ってもらって場所の確認を。消化器官の中で一番細い食道で引っかかっていなければ、2〜3日中にウンチと一緒に出てくるので心配ないでしょう。クリップや小さなおもちゃなどの場合は、先のとがった物は吐き出させないで受診してください。 | | | | | | |