あのねっと 今号の特集テーマ 子育て、親育ち  

いま活用したい!子育てサポートin高浜市
2.中高生の居場所「バコハ」 中高生のバンド活動を中高生自身がサポートする場。
バコハって、どんな場所?

 「ドラムを叩くのは楽しい。今日は完全燃焼しました」。クリスマスライブを主催した「バコハ」のスタッフで、自身もバンド出演した高校2年の浦崎正義さんは、ライブ終了後に満足そうな表情でそう語った。
 「バコハ」とは、「バンド・コンピュータ・ハウス」の略称。中高生による中高生のバンド活動の支援拠点として、高浜市勤労青少年ホームに練習用の防音スタジオを設け、その利用説明やライブの企画・運営をしている。現在、運営スタッフの中心メンバーは男子高校生5人ほど。彼らの活動を、NPO法人たかはまスポーツクラブのスタッフである大学3年の日下和雄さんたちがサポートする。日下さんはバコハの卒業生である。
 昨年12月18日の夜、浦崎さんたち運営スタッフはホームの集会室に集まり、翌週25日に開催するクリスマスライブの最後の打ち合わせを行った。その様子を見守り、時にはアドバイスするのも日下さんたちの仕事である。

盛り上がったクリスマスライブ

 ライブ当日。会場はホームの軽運動室。午後1時半の開演に向けて、午前10時半ごろから準備が始まった。スタジオからドラムセットなどの機材を運び込んだり、クリスマスの飾りつけをしたり。出演バンドのメンバーも手伝う。
 「今日はみんなで楽しんでいきましょう!」。浦崎さんの宣言でライブがスタート。出演バンドの友人など男女十数人がステージに注目する。最初に登場したのは、欠席したバンドの代わりに急きょ日下さんと運営スタッフが結成したバンド。ボーカルの日下さんは、アップテンポなロックを熱唱して勢いづけた。浦崎さんたちのバンドは3番目に登場。浦崎さんは汗びっしょりになってドラムを叩き、曲の合間には観客のなかに入って、みんなにお菓子を配るサプライズも見せた。
 この日は4つのバンドが出演し、好きなアーティストのロックを中心に20曲ほどを演奏。観客と一体になって盛り上がり、興奮の冷めやらぬうちに幕を閉じた。

中高生のアイデアで誕生

  バコハが発足したのは2005年。中高生の意見と、市が計画していた中高生の居場所づくりとがひとつになって実現した。その前身とも言えるのが、2001年に設置された「168人(ひろば)委員会」。委員会自体は、子ども自身が子どもの権利について考え、「子ども市民憲章」をつくることを目標としたものだった。そのなかで持ち上がったのが「自分たちの居場所が欲しい」という意見。そこで、中高生を含めた設置検討委員会をつくり、どんな居場所にするかを話し合った結果、練習場所を確保しにくいバンド愛好者のために、勤労青少年ホームを改修してスタジオをつくることになった。

引き継ぐスタッフの確保を

  バコハの運営は、168人委員会の高校生が中心になってスタート。当初は、スタジオの機材の使い方を説明できる人がいなかったり、機材が故障したりするなどの問題が生じ、市職員のバックアップはあったが、苦労が多かった。その後、スタジオの利用説明会を定期開催するようにし、NPOへの事業委託によって中高生に寄り添う支援者を確保するなど、運営を安定させていった。
 また、初年度は夏の「バコハ祭」だけだったライブも、公民館ホールでの卒業ライブ、バコハ卒業生や弾き語りのライブなども行うようになって回数が増え、バコハで練習する初心者バンドへの刺激にもなっている。2009年度は5回のライブを開催している。
 高校卒業と同時に運営スタッフを卒業するため、後輩が運営を引き継いでいくが、現在のスタッフは2年生が中心で1年生はいない。後輩たちにバコハ運営の楽しさを伝え、新たなスタッフを確保することが課題になっている。

ライブを企画するのは
楽しい
バコハ運営スタッフ
高校2年
浦崎正義さん

中学3年のとき、ドラムの練習をするために初めてバコハを訪れ、日下さんに誘われて高校1年からスタッフになりました。ライブの企画や運営は楽しいですし、人前で話すことにも慣れてきました。機材の調整の仕方は、スタッフになってから覚えました。自分たちでライブのチラシをつくり、クラスメイトに配ったりしています。

模索しながら
支援しています
NPO法人たかはまスポーツクラブ
バコハ担当日下和雄さん

中学1年のときに「168人委員会」に参加し、そのままバコハ運営スタッフになり、大学生になった今は支援する側になりました。どういう支援をしたらいいのかを模索しながらやっています。ライブの企画・運営も手伝いますが、ふだんは土日にホームに来てスタジオの利用説明をしたり、利用者データや会員登録リストをまとめたり。クリスマスライブの準備では、スタッフが指示待ちではなく、もう少し自分たちで動けるとよかったなと思います。

支援者がいるからこそ活動できる
高浜市こども未来部こども育成グループ 都築真哉主査

失敗や軌道修正をしながら、少しずつバコハの体制を整えてきました。日下くんのように、運営スタッフや利用者に寄り添って支援をしてくれる人がいるからこそ、活動を活発化できるんだと思います。また、弾き語りライブなども彼が友だちに声をかけてくれて実現しました。ライブ開催が増えれば、その情報が広まって「あそこに行けばライブができる」「楽しいものが見られる」という意識ができ、次につながっていくと思います。スタッフ会議では、雑談が多いながらも物事が決まっていき、それが効率を求める大人とは違うところですね。スタッフの確保が課題ですが、ライブの企画・運営はやってみれば楽しさがわかると思うので、そのきっかけづくりをしていく必要がありますね。

中高生の居場所「バコハ」

スタジオを利用するには、利用説明会に参加して会員登録することが必要。利用説明会は、毎月第2・4日曜日13:00〜14:00に開催。学生証の提示が必要。現在の会員数は約300人。バンド活動支援の他に、「バコハde卓球」を毎月第2・4日曜日の14:00〜16:00に開催。スタッフ会議は、毎週金曜日の夜に行われている。

高浜市論地町5-6-4 高浜市勤労青少年ホーム内
TEL 0566(52)4017

「子ども市民憲章」は、「168人委員会」の中高生たちが、子どもの権利条約の勉強や身近な問題についての話し合い、子どもと大人へのアンケート調査などを行い、中高生たち自身が文章を考えて制定された。市外在住者も入手可能。