僕の絵本を読んでくださった方から、膨大な数の読者カードが届いて驚いています。絵本のあとがきに、その本ができるきっかけになった子育てのエピソードなどを書いているんですが、それを読んで「共感した」とか「うちの子にそっくり」とか。絵本じゃなくてその感想か、というくらいに(笑)。
もちろん絵本の感想もあります。たとえば、最初に出版した『くっついた』に対して多いのは、お母さんと読んでいた子どもが、最後のページになるとお父さんを呼びに行き、3人で「ほっぺたがくっついた」をさせるというエピソード。なかなか子育てに参加できないお父さんも、照れながら親子3人でほっぺたをくっつけて、幸せを味わってもらえたらいいですね。
『くっついた』が生まれたのは、赤ちゃんだった娘にほっぺたをくっつけたら笑ってくれた、という話を出版社の方にしたときに、「それを絵本にしたらいいんじゃない?」と言われたことがきっかけです。なるほど、そういうことが絵本になるんだと思ったのと同時に、以前から考えていたマルとマルがくっつくグラフィカルな絵本のアイディアと結びついたことで、『くっついた』が出来上がりました。また、出来上がってから自分が伝えたかったことに気づくこともあり、最新作の『おはなをどうぞ』は、お母さんにお花をあげたい気持ちを描いたものなんですが、実は子どもの自立の話なのかなと思ったりしています。
娘を見ていると、絵本の題材になりそうなことは毎日のようにありますし、娘にも読ませたいなあと思って制作しています。でも、作りたいもののアイデアは、子育てだけでなく今の時代を見て感じることと制作意欲がミックスされて、自然に浮上してくる感じ。それを絵本という限られた世界にシンプルにまとめるのが僕のスタイルです。赤ちゃん絵本はライフワークですが、もっとデザイン的な絵も描きたいですし、ノスタルジックな世界や科学的な要素も織り交ぜながら、作品づくりをしていきたいですね。 |