私には3人の弟と妹がいるので、子どものころ、親にじっくりと絵本を読んでもらった記憶はあまりないんです。物心ついてから自分でよく読んでいて、高校生ぐらいまで絵本を集めることを趣味のようにしていました。たとえば、安野光雅さんの『旅の絵本』は絵だけで表現されていて、それを眺めて気持ちを落ち着かせていました。また、かこさとしさんのシリーズは子どもの表情が豊かで、いまだにすぐに絵が思い浮かびます。
3歳と1歳の娘たちと日中ずっと一緒に過ごすことのできない日には、寝る前に絵本を読むようにしています。ひざの上に座らせて体を密着させるようにして読むと、スキンシップになりますし、離れていた寂しさを補うというか、子どもにとって安心できる時間になっていることを感じます。
小さいうちはふれあいの時間をなるべく増やしたいので、医師の仕事は出産前のようにフルタイムではしていません。音楽の仕事も、地方の場合は子どもを連れて行き、おんぶや抱っこをしたままリハーサルをすることもあります。子どもとのふれあいは、時間ではなく濃密さという考え方もありますが、親と一緒にいるだけで子どもが落ち着くこともあるので、ある程度の「絶対時間」を持ちたいですね。そして、子どものちょっとした変化を味わう余裕を持って育てられたらと思っています。
幼いうちから強烈なメッセージだけをキャッチするような五感が身についてしまうと、本当のメッセージが聞き取れなくなってしまうので、過度に演出されることの多いテレビはあまり見せていません。私自身、あらゆる芸術やメディア、そして食べ物も「淡い味」が好き。そういうものの中にこそ、本当のメッセージが入っている気がします。 |