あのねっと 今号の特集テーマ 「おいしいねー」いつも笑顔で食べたいな。  
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 東京ピクニッククラブは、いろんな職業の人たちが、新宿御苑などの公園に集まってピクニックを楽しんでいるグループです。もちろん子ども連れOKで、私も5歳の娘を連れて参加しています。
 ひとくちにピクニックと言っても、奥が深いんですよ。発祥地はロンドンで200年の歴史があり、中央のラグに上がり込まずまわりを囲んで座るなど、日本人の知っているピクニックとはやり方が違うんです。その考え方をもとに、東京ピクニッククラブでは「集合時間・解散時間はなし」「持ち寄り食事」「労働を課さない」「お湯を沸かす以外は火を使わない」など、「ピクニックの15の心得」を決めました。
ホスト役がいるバーベキューや役割分担があるキャンプとは異なり、ピクニックではみんなが平等です。予測不能の出会いがある大人の社交の場で、少しお洒落をしたり、グッズにこだわってお出かけする「プチ晴れの日」という感じですね。
 大人は昼間からお酒を飲んでのんびりでき、子どもは走り回ったりして自由に遊べるのが、ピクニックのよさだと思います。みんなが持ち寄ったいろんな食べ物をつまみ食いできるのも楽しくて、娘も喜んでいます。ダラダラ食べではありますが、親も子も日常の縛りから解放されて、ルーズを楽しめる機会と考えてはどうでしょうか。
 ピクニック料理のコツは、出かける前に疲れてしまわないように、上手に手を抜くことです。何かひとつは手作りしても、あとは洗って入れるだけとか、ビン詰めのものにするとか。究極は、デパ地下で総菜もパンもフルーツもそろえるという方法があります。その場合、器を用意して現地で移し替えると見栄えがよく、プラスチックトレイが風で飛ぶこともありません。飲み物は、ワインやティーカクテルを持ち寄ったり、現地でお湯を沸かしてコーヒーやお茶を入れたり。私は、ジュースを凍らせて持っていくこともあります。
 ポイントは、何を選んでどう組み合わせるかで、食べ物と飲み物の相性を考慮するだけでもけっこうお洒落になります。料理の段取りは、サンドイッチならパンと具材を持って行き、現地で好きな物をはさんで食べれば、家での仕込みがラクだし、汁がこぼれる心配もありません。広げたときに「おいしそう」と思ってもらえるように、私は彩りにも気をつかっています。
 慣れてくると、シンプルな料理でもその人らしさが出てきて、それが会話のきっかけになるし、あとから来る人は「この時間ならフルーツを持っていこう」とか、ゴミを出さないようにといった配慮ができるようになります。また道具は、いつも家で使っているもので最小限のセットをそろえておけば大丈夫。食べ物を包んだり、そのまま紙皿代わりにできるオーブンシートは重宝しますよ。
 ピクニックの準備では「グラスどっちがいい?」と子どもに相談するなど、ちょっとしたことでも親子ですると楽しいし、子どものピクニック気分も盛り上がり、現地でスムーズに参加できます。また、グッズ選びを通して私のライフスタイルを子どもに伝える、いい機会になっています。
 現地では、持ってきた食べ物を皆さんに「どうぞ」とすすめたり、料理を持ってきた方に「いただきます」と声をかけてから食べるなど、子どものコミュニケート力が養われる面もあります。4〜5時間一緒に過ごすなかで、遊ぶ相手はいろいろ変わっていき、遊ぶ場所も少しずつ遠くなったりします。子ども好きのお姉さんやよそのお父さんが、順番で面倒を見てくれるので、親としては安心ですね。原っぱで見つけた小枝でも遊び道具として十分ですが、娘はお気に入りのぬいぐるみを入れたマイバスケットを持って行ったりします。バスケットを持つことでピクニック気分が盛り上がり、それを披露することが他の子と遊ぶきっかけになるんですよ。大人と一緒ですね。
 「何を食べようか」と考え始めたときから帰ってくるまで、食べることを軸に1日の時間がゆったり流れていく。その豊かさに、ピクニックを楽しむようになって気づくことができました。思い立ったが吉日。「いい天気だな」と思ったら、気軽にピクニックに出かけてみませんか。
●ふくとめ・なみ
1967年高知市生まれ。フードコーディネーターとしてレストランなどのメニュー企画に携わるほか、短大・専門学校や子ども料理教室の講師を務め、日本酒を世界に広める活動も行う。東京ピクニッククラブでは、ピクニックメニューの提案を担当。
●東京ピクニッククラブ

ピクニック生誕200周年にあたる2002年に結成。ピクニック権(都市居住者が緑地を満喫する権利)を主張し、公園の閉園時間延長などを働きかける。発足メンバーの松田朋春さんは「自宅に庭を持てない都市生活者にとって公園は“共有の庭”。芝生が立ち入り禁止で自由に使えないのはおかしい」と訴える。

東京ピクニッククラブ http://www.picnicclub.org/