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今回の公開展示ではコンピューターを活用した2作品と、コンピューターなどのデジタルメディアを一切使っていない1作品が登場しました。『ぶりゅっくん』では振動するしくみによって「背中」を意識した遊び方が提案されました。『汗かくビートウォッチ』では音を出すための「身体の動き」、『コエイロシャワー』では思い切り「声を出す」という体験が生まれました。自分の体のことは知っているようで実はあまり知らないのかもしれません。3つの作品を体験することで自分の後ろの気配や、自分の手足がどんなふうに動かせるのかということや、声を出す気持ちよさやそれが誰かに届く嬉しさなど、改めて身体から広がる遊びの面白さに気づくことができました。(14日間の公開展示期間中に、約7,600人が新しい遊びを体験しました。)
◎ぶりゅっくん[あしぷろ]
作品解説
「2人4脚」は、二人一組で、一人ひとつのぶりゅっくんを背負い背中あわせになってもらい、互いにぶりゅっくんが振動しないように気をつけながらゴールを目指します。 「円形鬼ごっこ」は、二つの円があり、中心にぶりゅっくん を背負った子が立ち、外側に背負ってない子が立ちます。 中心の子は振動を止めるためにぶりゅっくんを外側の子に向け、外側の子は円の中でぶりゅっくんから逃げ回ります。
感想
今回の展示では、遊びをどうデザインするかということ にとても悩みました。普段は知覚できない背後の情報を使った遊びという、おそらく誰も経験したことのない遊びを考えるということは想像していたよりも難しかったですが、最終的には背後の感覚に集中できるようにできるだけ要素をそぎ落としたシンプルな遊びを2つ用意しました。普段、子どもの遊びに大人を巻き込むのは難しいです。 それは、大人の方が身体的にも頭脳的にも有利なため、ハンディキャップの調整が難しいためです。相手に高さや歩幅、スピードを合わせる必要がある2人4 脚では 、大人も子どもも同じように苦戦していたように感じられました。 円形鬼ごっこでは、基本的な遊び方は変わらないのです が、教える人によって、多少アレンジがされていて、おもしろかったです。事前に子どもたちに遊んでもらう機会が少なく、不安もありましたが、始まってみれば子どもも大人 も一緒に走り回って遊んでもらえて良かったです。子ども同士、親子、おじいちゃんおばあちゃんと孫…いろんな組 み合わせで体験していただきましたが、どの組み合わせでも同じように楽しんでもらえていたように思います。形状や耐久性など、作品自体にはまだまだ改良点はありますが、誰も体験したことがない、知覚を拡張する遊びであることが年齢に関係なく子どものようになって遊んでもらえる要因になっていたと思いますし、年齢や身体能力などが異なる関係でも一緒に遊べる遊びのヒントがあるようにも思いました。
◎コエイロシャワー[舞鶴あそび隊]
作品解説
コエイロシャワーは、大きな声を出したり、耳を澄ませたりして遊びます。サイコロを振ってできる偶然の言葉 (コエイロワード)が、チャレンジタワーに張った糸を通じてつながります。誰でも知っている糸電話の仕組みを使って、誰かとつながる感覚を楽しめる作品です。
感想
遊びは、その場所、その時間、そこにいる人たちによってさまざまな顔を見せてくれます。やってみないと分からない事ばかりの連続で、とても刺激的な経験をさせていただきました。
言葉には、きちんと意味が伝わらなければいけないという固定観念があります。この遊びでは、意味のない言葉でも、きちんと聞こえなくても、人はつながる。というところを、たくさんの人に楽しんでもらえたのでは?と思っています。
コエイロワードを、戸惑いなく大きな声を出している大人の姿や、誰かの声に耳を澄ませてワクワクした表情が見せる子どものたちが、とても印象的でした。コエイロワードは、少しヘンテコで意味がない言葉なので、伝わらなくても恥ずかしくなかったり、言葉の響き自体を楽しめたりできる仕掛けになったと思っています。
また、チャレンジタワーという建物自体が持っている魅力も、遊びの中に取り入れる事ができ、動機を持って螺旋の通路を上から下へ、下から上へ行ったり来たりしている人たちがを見る事ができました。
これからも、大人も子どももドキドキわくわくできる、 遊びづくりに汗をかいていきたいと思います。
◎汗かくビートウォッチ[横佩 祐司]
作品解説
作品は仮設により頭上に水槽、LED ライトが設置されています。また水槽には水が入っており、スピーカーが 6 つ水面に向かってついております。体を照らしだされた光のなかで動くことで、天井のセンサーが反応し楽器の音がながれます 。 その楽器が6つ存在し 、体を動かすことで1つ1つの楽器を増やし、曲がコーラスするように出来上がっていく構造です。その増えていく楽器とともに水の波紋は増えます。この構造により体を動かすことで音楽は出来ていき、視覚的にも気持ちの高揚を生む作品になっております。
感想
今回の「Beat watch」の展示で私は作品の可能性に気付かされることが多くありました。
子ども達は作品に夢中なると、作品の照らされた光の中でずっとぐるぐる走り回っていました。大人の場合だと手だけを動かして楽器を増やすなど、多様な動きでしたが子どもたちだと大きく動かなければ、センサーは反応 しません。そこで、子どもたちはずっと走り続けていたのです。私はダンスを自分からしたくなるきっかけに繋がる作品を作ろうと、この作品をつくりましたが、作る対象が子どもたちになったとき、新しい遊具のような別の表情を見せたことに驚きました。インタラクティブな作品を作った時、このようなことは当たり前かもしれませんが、 自分の中では初めてだったので、大変良い経験でした。 目的とは違う形にはなりましたが、子どもたちが楽しそうに走り回るのをみて結果的には音を楽しんでいたので良かったと思います。またいざ楽しみ方を自分自身が子どもたちに直接教える機会があったのですが、子どもたちの方から楽しみ方を発見してくるような感じがしました。大きく体を動かすこと、素直に楽しむ心をもっているのは子ども達だと改めて気づかされ、貴重な経験をさせていただいたと思います。
そして外部での空間作品の展示は初めてで、準備、制作等で学んだ部分は大変多かったです。
作品の考え方が大きく変化し、楽しい展示でした。これからも自分の制作活動とダンスをライフワークとして、ともに続けていきたいです。
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