あのねっと 今号の特集テーマ “お父さん”を楽しもう  
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ひろしま・だいぞう
発達心理学の専門知識などを生かして“遊育玩具”のネットショップを経営。(株)ハッピーチャイルド代表取締役社長。日本アタッチメント育児協会では、発達心理学におけるアタッチメント(愛着関係)の普及活動を行っている。著書「ネクタイとっておんぶひも」(柘植書房新社)。お子さんは10歳と6歳。愛知県知多市在住。
トイ・フォー・ベビー http://www.toy4baby.com/
日本アタッチメント育児協会 http://www.naik.jp/
子どもに愛着を持つきっかけづくりを
赤ちゃんが生まれたとき、お父さんの場合は自然に子育てに入っていくことが難しいようですが、乳幼児にはどう接したらいいのでしょうか。
 僕も子どもが生まれたときそうでしたが、どうしても第三者的に見てしまい、かわいいんだけれども自分の子どもという実感がないんですよ。それに、お父さんは赤ちゃんが壊れそうな気がして、抱っこするのも怖々だったり、すぐにお母さんに渡そうとしたりします。
 お母さんが本能的に子どもを愛する部分があるのと違って、お父さんの場合は子どもの世話をするなかで、だんだん愛着が大きくなっていきます。だから、お母さんは最初に赤ちゃんの抱き方をお父さんに教えてあげるなど、愛着を持つきっかけをつくってあげるといいですね。そして、できればお父さんもオムツ交換などを積極的にするといいと思います。
 お父さんは、照れくさくて赤ちゃんを上手にあやせなかったりしますが、そういうときに赤ちゃんとふれあい対話するための道具の役割を果たしてくれるのが、おもちゃです。おもちゃを与えるときに一番大事なのは、子どもの発達段階に合っていること。だから、アバウトでいいので発達段階の知識があるといいですね。
 おもちゃが実際の年齢より大きい子向けで発達段階に合っていないと、子どもは全く反応しません。それが顕著なのが、視覚ができあがっていない6カ月ごろまでの時期で、赤ちゃん用品は淡い色のものが多いんですが、実は淡い色は視覚に届かないんです。でも、この「白黒赤絵本」のようにコントラストが強いと視覚に届き、絵本を動かすと目で追ったり、機嫌のいいときには笑顔を見せたりもする。赤ちゃんが反応してくれると楽しいので、お父さんは赤ちゃんに会いたくて家に帰るのが早くなります(笑)。
 そうして子どもへの愛着が生まれれば、そのあとはお母さんと同じような感覚で、子どもに接することができると思います。赤ちゃんが泣く原因も何となくわかり、もしオムツが濡れていたら自分で取り替える。それができると、お母さんから「ちょっと子どもを見てて」と言われてもストレスを感じないし、お母さんもすごく助かると思います。
遊び方は子どもが教えてくれる
子どもとの遊び方、おもちゃの選び方について、ポイントを教えてください。
 乳児期の遊びは、聞くこと、見ること、口で確かめることが中心です。だから、赤ちゃんの五感を刺激することを対話しながらやってあげるといいですね。赤ちゃんは、言葉の意味はわからなくても言葉のトーンや表情から何かを受け取ります。そうしてインプットされたものがベースとなって、発語につながります。赤ちゃんがニコッと笑ったら「いい笑顔だねえ」というように、反応に合わせてどんどん語りかけてあげることが大切です。また、赤ちゃんが泣く原因がわからず困ることがありますが、退屈して泣く場合もあると思うので、何か刺激を与えてあげれば安心するかもしれませんね。
 歩き始めるようになってからは、いわゆる大人がイメージしている遊びができるようになりますが、できれば遊ばせておくのではなく、かかわってあげたいですね。そのときに大事なのは、親の「遊び観」を押しつけるのではなく、「何をすればいいかは子どもが教えてくれる」という考え方で、その子のできることに合わせてかかわってあげること。たとえば積み木を積まないでポンと投げたり、横に並べたりして遊んでも、その子にとってはそれを楽しんだり、学んだりしている時期なので、止める必要はありません。
 おもちゃ選びのポイントとしては、6歳まではいろんな遊び方ができるシンプルなおもちゃで、なるべく木などの自然素材のものがいいでしょうし、型はめのように発達の課題性を持ったものもいいと思います。子どもが遊ぶ原動力は「何これ?」から始まる探求心です。シンプルなおもちゃに対しては、ジワジワとおもしろさに気づいて遊びが広がっていき、やがてすごい集中力で遊びます。与えたときに興味を示さない場合でも、そのうち引っ張り出して遊ぶこともあると思いますよ。
 お父さんは子どもとの接点が遊びに集中せざるを得ないし、おもしろがる傾向がお母さんより強いので、遊び上手になりやすいかもしれません。それを存分に発揮できるのが2〜3歳を超えてからで、お父さんたちはよく言いますよね、「3歳過ぎてからかわいくなった」って。楽しく遊んだら「パパ大好き」とか言ってくれて、ますます楽しくなるんですよね(笑)。
夫婦で楽しい時間を共有しよう
最後に、子育て家庭へメッセージをお願いします。
 お父さんに一番伝えたいのは、母子関係が中心になる3歳ごろまでは、お母さんのサポートに徹してほしいということ。ただ、仕事が忙しくて毎日家事を手伝うのは難しい場合も多いので、まずは「家事も子育てもやって大変だね。ありがとう」と感謝の言葉を伝える。お母さんのストレスは「ありがとう」の言葉によって、ずいぶん軽くなるようです。そして、できるなら週に1〜2回でも皿洗いをしたり、一緒に洗濯物をたたんだりする。そうすると、「助かった」という思いから、お母さんの心にお父さんへの愛情や尊敬の気持ちが育ちます。それを感じ取った子どもも、お父さんを尊敬の目で見るようになり、子どもが大きくなるにつれて出番が増えるお父さんと子どもとの関係が築きやすくなります。
 お父さんの役割のひとつとして、一貫性を持って子どもに接するということがあります。子どもは大きくなると論理性が出てきて、「この前はこう言ったのに、なんで今はだめなの?」と聞いてきたりします。そういうときに、社会性を育てるという観点から、お父さんが説明したほうがより説得力を持つ場合もあるんですよね。
 お母さんへのお願いとしては、お父さんと会話してあげてほしいということです。意外かもしれませんが、お父さんはどんなことでもいいので、お母さんと話をしたいものなんです。でも、お母さんは赤ちゃんと一緒に寝てしまい、仕事から帰ってきても夫婦で会話する時間がないと、お父さんは置いてきぼりの気分になる。だから、疲れているとは思いますが、週に1〜2回でもいいから赤ちゃんが寝ついたら一度起きて、少しでも話し相手になってあげてほしいですね。それから、お父さんが「オレが洗い物をするよ」と言ったときには、「じゃあ私は拭くわ」というように一緒にやってあげてほしい。そうして楽しい時間を共有すると、また次もやろうという気になり、お母さんとの関係もよくなると思います。
1歳を過ぎたのに、他の子のように「ひとり遊び」ができません。
おもちゃが合っていないのでしょうか?
基本的に1歳では「ひとり遊び」はしません。探究心を持って、集中して遊びに取り組んでいるときに「ひとり遊び」をしますが、少なくとも2〜3歳以降の話です。また、「ひとり遊び」をするかしないかは、発達においてそれほど重要なことではなく、むしろ個性によるところもあります。それよりも、この時期はまだお母さん(お父さん)のかかわりが遊びを広げ、親との対話を通して子どもは発達の階段を上ります。基本的に、乳児期(0〜2歳くらい)の子どもはひとりでは遊ばないものと理解して、積極的にかかわってあげてほしいと思います。
夫は、小学3年生の娘と遊びにくそうにしています。
一緒に遊ぶコツや遊び方はありますか?
まず、男親が女の子と遊ぶのは、もともとハードルが高いものです。9歳ともなると女の子特有の遊びを楽しむようになり、それはお父さんの原体験にはありません。でも、男女に関係のない遊びもありますね。室内なら、工作やお絵描き、ボードゲームやトランプなどはどうでしょう。屋外なら、目的地を決めてサイクリングに出かけたり、途中のコンビニでお菓子を買ってピクニック仕立てにしたりしても、楽しめると思います。このように、目標設定やイベント性などを盛り込むことで、お父さんならではの遊びが成立して、楽しい時間が過ごせます。