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もし今、しつけに不安を感じているとしたら、こんな視点で見直すことも必要かもしれない。熊田弁護士は言う。
「どこまでがしつけでどこからが虐待かという点のみに、目が行き過ぎているのではないでしょうか。しつけの本質は、自分が子どもに何を伝えたいか、それをどのような方法で伝えるかだと思います。子どものためと思ってしていても、本当はそうではないこともあるのではないか。叩かないとしつけはできないのか。子どもを型にはめることをしつけと思い込み、思いどおりにならずにストレスをためている面
もあるかもしれませんね」。
ストレスをためない方法について、熊田弁護士は自身の経験もふまえて語る。
「カッとして子どもに手をあげてしまっても、『しまった』と思えればいいのではないでしょうか。あとでくよくよ悩むより、『ごめんね』と言える関係をつくる方がいいし、子どもは利口なので親の気持ちがわかると思います。子どもとずっと顔を突き合わせていれば、イライラするときもありますから、自分の負担にならない方法で親子とも社会との接点をもち、家族関係の風通
しをよくしておく。そうすれば、親も子も必然的にゆったりしてくるのではないでしょうか。そして、子どもがかわいいなと思ったら、それを楽しむ気持ちが大事だと思いますね」。
親に対する日頃のサポートについて、児童相談所ではどのような姿勢でのぞんでいるのだろうか。
「虐待は、社会的に孤立して誰にも助けを求められない状況で起きるので、まずは親を孤立させないことですね。それと同時に、追いつめないこと。こちらが支援と思って手を差しのべても、生活で手一杯だと、新たな介入をわずらわしく感じ、逆効果
になってしまう場合があります。だから、子育てのハードルを低くして、お母さんの負担を減らしていくという視点で支援することが大事です」と山田心理判定員。
また、子育てについてアドバイスをするとしたら何だろうか。
「子どもは、親がいつも目をかけていなくても、1日のうち10分でも向き合って抱きしめてもらえれば、けっこう頑張れるものだと思います。ですから、ときには子どものことを頭から切り離して、自分の時間や夫婦だけの時間をもつことも必要だと思いますね。
また、子育てが不安になるのは、子どもの行く末を案じるがゆえに、その子の能力からかけ離れた課題を次から次へとつくり、それができない子どもに怒りを感じている部分もあるようです。今を良しとして、子どもが生き生きとしている場面
に目を向ければ、子どもをほめるチャンスが増え、親子のコミュニケーションもとれるはず。そうすれば子どもは満足し、お母さんも肩の力が抜けるのではないでしょうか」。
(取材日/2001年12月4日・11日) |