ケース2
3歳の子に良い悪いをそのつど言い聞かせるが、また同じことをやっている。年齢なりのしつけ方って、あるの? また、親の態度が家庭の内外で変わってしまうこともあり、子どもに与える影響が心配
忍耐強く見守ることもしつけ。
編集部  中野先生、ケース2の中の「3歳の子に良い悪いをそのつど言い聞かせるが…」という点についてはどうでしょう。

中野先生  子どもは何度叱っても言うことを聞かないものですよね。特に3歳ごろは第1次反抗期でもあります。ですが、良い悪いの判断がついていく時期ですし、子どもは大人が思う以上に学んでいく能力を持っています。ですから、悪いことをしたときはその場で叱ること。あとから叱られても、子どもは納得できないからです。叱ってもすぐに効果は出ないかもしれませんが、毎日の繰り返しがあとで生きてくると思います。
 また同時に3歳ごろは、自分の世界が広がっていく大事な時期で、たとえば「自分で服を着る」と言い始めたりします。結局、自分で着られなかったりするわけですが、そういうときに「それ見なさい」と叱らないこと。忍耐がいると思いますが、「やれるまでやってみなさい」と言って、見守ってあげることもしつけだと思います。

服部さん  上の子のときは、神経質になって小さい頃から言い聞かせたりしていましたが、下にいくにつれてゆとりができました。トイレトレーニングにしても、その子の時期が来たらオムツは取れるだろうと焦らないし、イラズラをしても当たり前に思えて、下の子はまあるく叱ってしまいますね。

加藤さん  上の子は食が細かったので食べさせることに必死で、子どもは嫌がるし、私も苦しかったんですが、あるとき子どもから「お母さん、残してごめんね」と言われ、子どもを追い詰めていたことに気づきました。「苦しんでまですることではない」と思えるようになってからは気が楽になり、あまり「残さないで」と言わなくなりました。

伊藤さん  私は「親なんだから私がしてあげなければ」と、上の子に対して思っていました。その結果、「親にやってもらって当然」という気持ちを持たせてしまったようです。子どもは自分でやれる力を持っていて、少し距離をおいて育てることができた下の子は、それをがんがんアピールしてきますね。

吉田さん  うちは一人っ子の期間が長いのでかかりっきりになってしまい、厳しくしすぎたり感情的に怒ったりして、悪かったなと思っています。

中野先生  どこの家庭でも上の子と下の子では育て方が変わり、性格も変わってくるものです。たとえば兄弟が3人いて、まんじゅうを2つもらったとします。そうすると、いちばん上は3等分することを考え、2番目は自分ひとりでひとつ取ることを考える。そして3番目は陰でもらえればいいという心理から、目と目で会話したりして、欲しいという気持ちを素直に出さない。

服部さん  そのとおりですね(笑)

中野先生  最初の子には「親として何かしなければ」と思って手をかけがちですし、情報がありすぎて子育てにゆとりを持てなくなる面もあります。それに比べて、下の子には甘くなってしまう。3人兄弟の場合、たとえばいちばん上は慎重派、2番目は要領がいい、3番目はかけひきが上手というように、それぞれ性格が違ってくるのは自然なことです。
 ただ、上の子に「お兄ちゃんなんだから」と言い聞かせることがありますが、そう言われるとプレッシャーを感じて、周りを気にしすぎてしまう場合もありますから、控えた方がいいでしょうね。

「一貫性のあるしつけを」
とは言っても…
編集部  親の態度が家庭の中と外とで変わってしまうことについては、皆さん、いかがですか?

服部さん  友だちの家に遊びに行くと、そこのお子さんが私にいろんな話をしてくれるんですが、「うちのお母さんね、おばちゃんが帰ったあとに『あんなことまでしゃべって』と怒るんだよ」って言っていました(笑)。周りに人がいると建て前があって、怒りたくても怒れないときがありますよね。子どもの方もよくわかっています。

加藤さん  肩に力が入っていたときは、外ではガマンしてしまってあまり叱れず、家に帰ってから「あなた、あのときはね…!」と叱ったこともあります。でも、肩の力が抜けるようになってからは、あまり家と外とで変えずに済むようになりました。

伊藤さん  私が劇的に変身するのは電話がかかってきたときです。子どもをすごく怒っていても、電話に出るとコロッと別人のようになる(笑)。そういう私を見て「どうしてそんなに変われるの?」と子どもから指摘されます。それに子どもは、私が電話しているときにわざわざ「これ食べていい?」と聞いて来るんです。電話中なら叱られないことを知っているんですね。

吉田さん  スーパーなどで、ものすごい勢いでお母さんが子どもを怒っているのを見ると、いい気持ちはしないので、外ではあまり叱らない方がいいのかなと思ってしまいます。

中野先生  しつけと怒ることとは違って、大きな声で怒るのはしつけとは思えません。たとえば、棚の物を落とした子どもを叱るとしたら、「お店に迷惑がかかるから」と説明して一緒に棚に戻すのがしつけだと思います。
 家と外とで親の態度が変わってしまうと、子どもは自分の価値観をつくりにくくなるので、できるだけ一貫性を持たせた方がいいでしょうね。ですが、つい違うことを言ってしまうこともありますから、そういう場合は素直に謝ったり、逆にそれを話題にしてしまうくらいでいいのではないでしょうか。
 子どもを怒ると、お父さんの場合は尾を引いて、電話がかかってきても平静に戻れないものですが(笑)、不思議とお母さんの場合は、30分もすれば子どもと一緒にケーキを食べられますよね。ですから多少、お母さんが感情的に怒っても大丈夫なようですね。

吉田さん  そうかもしれません。私が怒っても、子どもはすぐ「お母さん」と言って来てくれますから、親として不安はいろいろあっても自信を持つことが大事ですね。