あのねっと今号の特集テーマ 「親子であそぶ」って? 
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 僕は小学生のころから、みんなを笑わせるのが好きでしたね。給食の時間になると早めに食べ終わり、向かい合う席のすき間から顔を出して、校長先生のあいさつのマネなんかをして、牛乳を吹き出させることが快感でした。警戒する同級生を相手に、間合いを計って笑わせる自分も楽しいし、それを見てみんなが喜んでいる空気も楽しいと感じていたんでしょうね。
 近所の子どもたちと遊ぶときも、最初に外へ出ていって楽しい現場を発見し、遊んだあとはみんなが家に帰って玄関を閉めるところまで見送って帰るような子でした。遊びのアイデアを次々に出す中心的な存在ではありましたが、リーダーになって上下関係をつくるのは、自由を失うようで好きじゃなかったですね。平和主義者で、無邪気に遊びながらも泣いている子がいたら気になったし、だれかが怒ってイヤな空気になるのも嫌いでした。
 7歳と1歳の息子たちとも、横並びの関係を大事にしています。一緒に遊ぶときも、同じレベルで「遊ぼうぜ!」というノリですね。子どもは大人が思いもよらない発想をするし、子どもに教えられることはたくさんあります。1歳の子でさえ「こんな笑顔、ようせんわ」という表情を見せて、笑顔で人を幸せにできるんだと教えてくれる。この世にたったひとりしかいない人間として、尊重し尊敬しますね。
 子どもの創造力は無限大だし、それが養われるのは遊びの中ですよね。前に地元の大阪に帰ったとき、友だちが10家族ぐらい集まったんです。子どもだけでも20人以上いて一緒に遊んだんですが、それぞれが「次、これしよ」と言っていろんなアイデアを出し寄るんです。絶対にできないアイデアもあるんだけど、聞いてるだけでオモシロイ。
 そういうとき、大人はまとめようとしちゃダメですね。「ああしてな、こうしてな」と説明しているうちに、自分で無理だなと判断する子もいるし、「それはあかん」と仕切る子も出てくる。大人は、選択肢を与えて環境づくりをしたり、子どもが「どうしよう」と困ったときに、経験値として乗り越える手段を教えてあげて、手助けすることが大事な気がします。おもちゃを選ぶときも、子どもにとっていいかどうかを考えて、遊び心のある物を見つけて与えることが、大人ができる環境づくりのひとつだと思いますね。
 世間では学校の課題ができる子だけが評価されがちですが、持って生まれた才能や育つ環境は一人ひとり違い、養われていくものも違うわけですから、学業以外の得意なことも認めてあげたいですね。学校の課題ができない子も、他のことで才能が発揮できれば楽しいと思うんです。だから、親である僕らは学校では出さない課題をどんどん与えて、その子の持ち味を引き出してあげないといけない。それが家庭教育の役割だし、親の喜びでもある。そうやって子どもに手をかけられることが幸せだと思いますね。
 夫婦の間で常識・非常識のモノサシが違うのは自然なことで、子どもの教育の仕方が多少違っても、子どもには逃げ道になって救いなのかなと思います。子どもが悪いことをしたときは、見つかった時点で反省してるもんなんで、「いけないことをした」と感じさせる空気は必要ですが、そんなに叱らなくてもいいのかなという気がします。僕も親に叱られた経験はあんまりなくて、家で火遊びを見つかったときも親父は怒らなかったんですが、二度としませんでしたね。
 他人に迷惑をかけてはいけませんが、自分の人生なので好きなことをすればいいと思います。僕自身も「山口智充の人生って、めちゃめちゃオモシロかったわ」と思えることが、本当の親孝行だと思うし、子どもにもそうあってほしい。父ちゃんがハッピーに生きる姿を見せていれば、子どもは「人生は楽しいもんなんだな」「大人になりたいな」と夢を持ちますよね。だから、嫌なことがあっても、絶対に子どもの前でグチを言っちゃいかんなと思っています。
 僕は年齢に関係なく、オモシロイものはオモシロイ、好きなものは好きという気持ちを大事にしたい。公園のすべり台でも、ゾウさんの鼻の形になってるやつとか、ローラーのついた長〜いのとかあって、子どもが滑るのを見てると自分もすごくやりたくなるんです(笑)。30代の男ばっかりで隠れんぼしても楽しいし、隠れ方もウマなって「そこに隠れてるか!?」と驚かされたり。ワクワク度で言えば、子ども時代に覚えた積み木遊びも、大人になって乗るバイクや車も同じで、横並びでどんどん増えていって、卒業した遊びはひとつもない。遊びの種目を多く持っていることが、男の子の幅というか厚みだと思いますね。
●やまぐち・ともみつ
1969年大阪生まれ。バラエティ・ドラマ・映画・ライブなどさまざまな分野で活躍し「ぐっさん」の愛称で幅広い層の人に親しまれる。ものまねのレパートリーが100を超える一方、音楽ユニット「くず」として2004年に発表した「全てが僕の力になる!」などが大ヒット。東海テレビ「ぐっさん家(ち)」など数多くのテレビ番組にレギュラー出演。