子どもの顔が輝くクッキング保育。
 どんぐり保育園では、通常の給食だけでなく、子ども自身が作って食べる「クッキング保育」を年間20回ほど行っている。
 先日実施した4、5歳児クラスのパン作りでは、自分たちで材料を買いに行き、生地をこね、思い思いの形を作ってホットプレートで焼いた。
 「焼けてくると『パンのにおいがする!』と声をあげたり、『おいしい!』と言って満足そうに食べたり。念願のロボットパンを作って喜んだ子もいましたよ。自分で作りたいという欲求は誰しもあり、自分で作ったものには愛着を感じるようですね」と北方さん。日頃の給食では途中で席を立ってしまう子も、その時は集中力が違うようだ。
 それをきっかけに、通常の給食でも効果が見られるかと期待して尋ねると、北方さんは「すぐに効果は期待できません。クッキング保育は、結果よりもその時に一生懸命になれることが、子どもにとって魅力的なんだと思いますね」。
 さらにどんぐり保育園では、子どもたちが「レストランごっこ」と呼ぶ、カフェテリア方式の給食も年1回行っている。カレーライスなど、通常の給食では出さないメニューを何種類か用意し、子どもたちが好きなものを選ぶ。お替わり自由なのでみんなお腹いっぱい食べるという。
 北方さんは「食べたいものを選ぶことも必要と思う半面、幼児期は土台をつくる時期で、自分で選んで食べるのはもう少し大きくなってからという気持ちも強いので、カフェテリア方式は行事の時に意を決してやるという感じです。子どもたちには、日常の当たり前の食事を、おいしく食べられるようになってほしいと思っています」。
 お昼の12時半。子どもたちはみんな給食を食べ終わり、給食室からは後片づけの音が聞こえる。4歳児まではお昼寝タイムに入り、5歳児クラスの何人かが半袖姿のまま元気に園庭へ飛び出した。

(取材日/2000年12月19日)


【社会福祉法人 緑の丘福祉会 どんぐり保育園】
1964年、名古屋大学関係者の有志による保育所づくりが始まりで、1976年に認可保育園に。1985年に園舎を全面改築し、乳児から幼児までの一貫保育を開始。保護者と職員で運営委員会をつくって園の運営を行い、「緑と自然の恵みを保育にとりこみ四季の変化を実感する保育」などに取り組む。現在の在籍園児は74人で、栄養士ら4人が給食を担当。
名古屋市千種区仁座町120
TEL 052(782)1210

栄養士らが、より充実した
給食づくりをめざす給食部会


 保育園の給食スタッフ同士が学び合う場に、「愛知県小規模保育所連合会・給食部会」という組織がある。現在18の保育園から栄養士や調理師が参加していて、どんぐり保育園の北方さんもその一員だ。「給食担当者の力量 を高め、保育園の給食をより充実させる」ことが部会の目的で、和食を中心とした給食づくりを基本に、子どもたちの心と体を育む食のあり方を探っている。
 月1回の部会では、保育園の視察・交流や調理実習などを行い、12月は「行事食・クリスマス」をテーマに、調理実習を実施。アレルギー対応を考えながら作り、クリスマスらしい飾りつけで仕上げた後、みんなで試食し感想や意見を出し合った。
 部会には経験1、2年の給食スタッフからベテランまで参加。「特に若い人たちは、ベテランから学ぶ技術や知恵は多いと思うし、みんなここで勉強したことを自分の職場で生かしています」とメンバー。日頃、子どもたちが何気なく食べている給食も、舞台裏のこうした努力に支えられている。

左から小川美露さん(ひまわり保育園/名古屋)、 廣田多恵さん(春日井第一そだち保育園)、 小山初子さん(かわらまち夜間保育園/名古屋)。


「行事食・クリスマス」。
チャーハンやポテトサラダなどを飾りつける。