旬の素材を使った薄味メニュー。
毎朝、昼食メニューを聞きに来る。




 「今日の献立は何ですかー」
 給食室の配膳口で3人の園児たちの可愛らしい声がひびく。
 どんぐり保育園では毎朝、定刻になると4、5歳児クラスの当番の子どもたちが給食室にやって来て、クラスのみんなに伝えるためにメニューを尋ねる。栄養士の北方幸江さんが、子ども一人ひとりを見ながら「カノちゃんはゆかりごはんと味噌汁、ミチはサバの味噌煮……」と3人に振り分けてメニューを覚えさせると、子どもたちは「わかった!」と元気よく戻っていく。
 ここの給食メニューは、肉や魚・豆腐をメインに旬の野菜を組み合わせたおかずと、ごはん・汁物といった和食が基本になっている。ごはんの水加減は冷めても硬くなりにくいようにやや多めにし、おかずの味つけは「素材そのものの味を知ってほしいから」と薄味にしている。

 北方さんは「以前はもっと薄味だったんですが、家庭の味とのギャップを考慮して改善しました。薄味にも限界があるし、『おいしかった』と思って食べ終わってほしいですから。おいしさというのは単に味だけでなく、みんなと一緒に食べたり、作ってくれる人が目の前にいたりという、いろんな要素が混ざり合っていると思います」。
 「旬の野菜を使う」という話だが、1年中どんな野菜でも手に入る今、旬にこだわるのはなぜだろう。北方さんは言う。
 「旬のものはみずみずしくて味がよく、栄養価も高いので健康づくりには大事です。だからこの季節は、大根・レンコン・白菜・里芋をくり返し使い、トマトやキュウリなどの夏野菜は使っていません。それに今は何気なく食べていても、季節と結びついた食べ物の思い出は大人になっても心に残るもので、心の育ちの面 でも大事ではないでしょうか」。
 食材選びでは安全面も考え、食品添加物を含むハムやはんぺんなどの加工食品はあまり使わず、遺伝子組み換え食品も使わないよう神経をつかっている。
北方さん

藤原さん
 また子どもが給食に慣れやすいよう、1年の間でも4、5月はより食べやすい内容にし、6月から9月半ばは味つけにメリハリを持たせ、秋から野菜をたっぷり入れるという配慮をしている。1週間のうちでは、休み明けの月曜日は特に子どもの好きなものを入れるというのもポイントだ。
 年1回行う保護者のための試食会では、おおむね「薄味だけれどダシがよく効いておいしい」という評価。保護者の反応について、主幹保育士の藤原葉子さんは「子どもの体にいいものは大人にとってもいいので、家庭の味を保育園の味に近づける方もいらっしゃいますね」。