垣内先生 |
加藤さんと池崎さんは1人目の子育てが大変だったようですが、お父さんやまわりの人のサポートはどうでしたか? |
加藤さん |
夫は帰りが遅いのでほとんど手伝ってもらえませんでした。結婚してこちらに来たので、近所に気軽に話せる人もいなかったし実家も遠くて。子どもが幼稚園に入るまで私自身の友だちはできませんでした。 |
池崎さん |
私は出産を機に仕事をやめたんですが、それでやっと近所の方の顔が覚わり、コミュニケーションがとれるようになりました。子どもをあやしてくださったり、また子どもの方もなついたり。子どもの顔に湿疹が出たときも、近所のおばあちゃんが「小さいうちはよく出るものだからねえ」と言ってくれました。今もお隣の家がかけ込み寺で、主人が不在のときに子どもが高熱を出すと、車で病院まで連れていってもらったりしています。主人も子どもをあやしに朝5時に外へ連れて行ってくれたりして、協力してくれました。 |
垣内先生 |
ほとんどの人が「1人目の子育てがつらかった」という傾向があるようですね。思いどおりにいかなくてイライラしたり、あるいは自分のやりたいことが全然できないとか、夫に文句を言いたいけど、どう言っていいかわからいないとか。そういう時に「つらい」と言えるといいんですが、母親たるものそんなことを言ってはいけないような心理状況があるんでしょうね。
それに「子産み幸せ幻想」みたいなイメージが作られていることも問題で、「産んでみたらイメージと大違い」という方は多いですね。母性を神格化してしまうと、かえって問題を生じさせてしまうんですね。母性本能と言われる感情は女性特有のものではなく、男性だって開発されれば生まれてくると思うんです。男性の方が子育てに向いている場合もありますから、夫婦の間で好きな方、上手な方がより多く育児を分担したっていいじゃないでしょうか。
加藤さんが「母親に向いてないと思った」と言われましたが、それは理想の母親像があって、それに近づけなかったからじゃないかと思います。強く思い過ぎず、「私はいい加減な母親」と思うくらいの方が、育児はラクだし楽しめるかもしれませんね。
また池崎さんは、子どもが生まれたことで地域との関係ができたようですが、最初は家族が地域に根ざしていませんし、当のお母さんが不安と当惑を抱えていますよね。そういう時は、保健婦さんのアドバイスが有効ですが、保育園とか先輩のお母さんによる子育てサークルなど、もっと身近なサポートがあると助かると思います。
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