特集 あのねっと発「テーマトーキング」
楽しめなかった一人目の育児。
編集部  今回は特集テーマを「ひずんでしまった親子関係の行方は?」としました。子育てに対する「思い込み」や「育児情報と違う」といったことから、誰しも悩んだり親子関係にズレが生じたりしたことがあると思うのですが、まずそういうご自身の経験や日頃感じていることについて、お聞きしたいと思います。お子さんを2人お持ちの加藤さんはいかがですか?

加藤さん  今は余裕ができて楽しく子育てしていますが、子どもが赤ちゃんのときは育児がすごくしんどかったです。母乳で育てなければと思っていたのに出なくて、罪悪感を感じながらミルクをあげて、離乳食のときも幼児期も、食が細くてあまり食べてくれなかったので、食事の時間が憂うつでした。
 ちゃんと育てられるか不安なうえに、まわりからのプレッシャーでさらに不安になって、「自分は母親に向いてない」と思いました。子育てはイメージと全然違って、実感として子どもを可愛いと思えなかったし、虐待してしまう気持ちはわかる気がします。いま思うと、どうして楽しく子育てできなかったんだろうという後悔はあります。

編集部  3人のお子さんをお持ちの池崎さんはいかがですか?。

池崎さん  上の子が6カ月のときにアレルギーが出て、育児が楽しいというより「どうやって育てようか」という気持ちの方が強くて、1歳ぐらいまでは記憶にないくらい必死でした。その時のことを思えば、いま3人がいくらやかましくても耐えられるという感じです(笑)。今は育児サークルに入っていて、ほかのお母さんや先輩のお母さんの話を参考にできますが、上の子だけのときはサークルにも入れない状態だったので、心理面でだいぶ違うなと思います。
 最近思うのは、もっと子育てする側にとってうれしいサポートをしてほしいということ。たとえば情報がもっと身近な場所で手に入るとか、サークル活動する場が借りやすいとか。児童館も地域によってあまり活動してないところもあって、寂しいなと思います。

編集部  生田さんも3人のお子さんがいらっしゃって、上の2人はもう中学生だそうですが…

生田さん  子どもが小さい頃はほとんど妻が育児をしていて、私は妻からイライラをぶつけられても逃げるという感じでした。今は基本的には家事分担していますが、子どもが大きくなると妻も余裕ができて、「今ごろ助けてもらってもしょうがない」という感じで、私はやらせてもらえなかったり(笑)。きっと忙しいときに、手伝わなければいけないことが、たくさんあったんでしょうね。
 女性の場合は、子どもに手がかからなくなって状況が変わっても、適応が早いみたいですが、男はそのトンネルがやたら長くて、気がついた頃にはだれにも頼りにされなくなっている(笑)。最近はそんなことを感じてます。

編集部  今回は現役の子育て世代の皆さんに加えて、祖父母の世代の方にも参加していただいています。種井さんは学校の先生をされていたそうですが……

種井さん  私は子どもが好きで、ずっと小学校の教師をやってきました。在職中1500人のお母さんたちと会い、学校・親・子のサイクルがうまくいくよう、特に学級通信に力を入れてきました。見えない心を表す手段は日記や作文しかありません。それらを通してその子の長所を発見し、みんなでほめてあげれば、どの子も善い子になると信じて続けてきました。そういう経験が役に立てばと今日参加させていただきました。  私が最近思うのは、赤ん坊を船のようなカゴ(クーハン)に入れて持ち運ぶ人を、スーパーなどで見かけますが、そういう光景を見ると涙が出るほど悲しくなるんですね。人間は物じゃありませんから、抱っこやおんぶをしてあげないと。それから児童クラブで2年ほど子どもたちと過ごしましたけど、工作をやらせたときにアドバイスすると、「もういい。やりたくない」と言って投げ出す。そういうのを見ると、だんだん育て方が間違ってきてるなと思います。


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