あのねっと 今号の特集テーマ 子育て、親育ち  

自分と親との関係は、子育てに影響している?

澤田さん 私は母親にすごく厳しく育てられたので、もう少し大らかに育ててくれてもよかったのではないかという思いが、感謝の気持ちと同時にあります。自分の子ども時代のマイナス面ばかりを思い出してしまい、自分の子どもも私に対してそう思ったらどうしよう、という不安がありました。でも、妹と子ども時代のことを話したときに、私も悪かったのかなと思ったり、母との会話で母も悩みながら私を育ててくれたことが伝わってくるので、乗り越えていけそうな気もします。また、他の人の子育てを知ることで、自分の子育てを客観的に見て欠点を修正していけたらいいなと思っています。
礒部さん 自分が子どもを産んでから、母親から子育ての話を聞きました。私は最初の子どもだったので、おむつを外す準備を早くしすぎたりして「かわいそうなことをした」という話もしてくれました。子育てについて、母親とよくしゃべるようになってよかったなと思っています。
古田さん うちは自由にさせてもらいましたし、母親とは何でも話す友だちみたいな関係でした。今も、母と一緒に買い物に行ったりして仲良くしています。だから、娘が大きくなっても何でも話してほしいし、買い物も一緒に行きたいですね。
中川さん 私の母は、私たち3姉妹をすごく苦労して育て、たくさんの愛情をくれたので、私も子どもたちに愛情をあげられるんだなと思います。母の苦労に比べれば、私はダンナに子育てや家事を手伝ってもらって、なんて幸せなんだろうと思います。
岩田さん 私もどちらかというと厳しく育てられました。母が言うには、女性はゆくゆくはお嫁に行くので、それを考えて厳しく育てたということでした。でも、そういうふうに育ててもらって感謝している部分もあり、私の子育てに反映されている部分もあります。厳しさも持ちつつ愛情をいっぱいかけながら、子育てしていこうと思っています。
若松さん 私は子どものころ、親に山や川や海によく連れて行ってもらいました。だから、私も子どもが自然と触れ合ったり、体を使って体験できることを重視して子育てしたいと思っています。ただ、親の思い入れが強いと子どもの負担になるので、さじ加減が難しいですね。
後藤センター長 子育てをしていくなかで、自分と子どもの関係には、親と自分の関係がかかわっていることに気がつくときがあると思います。どの人も幸せだけで暮らしてきた人はいないでしょうし、いろんな場面で気づくことが大切なんでしょうね。今こうしてお話しできたり、いろんな人の子育てを聞かせてもらうことが、自分の糧になっていくんだろうなと思います。

子どもに気づかされたこと、育ててもらったことは?

若松さん 独身時代は、朝早くから仕事に行き、終電で帰って寝るだけの生活でしたし、自然に目を向ける余裕はありませんでした。でも、今は公園の葉の緑に目が行ったり、子どもと虫取りをしたりして、本当に人間らしい生活になったと思います。子どもの目線と足取りに合わせることで、ゆっくりとした時間を持つことの大切さを知り、私の生き方の軌道修正ができた気がします。子どもを尊重することによって、自分を知ることが多いですね。
古田さん 子どもがいないときは夫婦ゲンカも存分にできましたが、今は夫婦の関係が悪いと子どもが気を使うので、こっちがちょっと抑えなければと思うようになりました。ケンカのあとも、自分から主人に声をかけるようになりました。
中川さん 子どもが生まれて、食べ物に対する考え方がすごく変わりました。今までは安ければいいと思って買ったり、外食も気にせずにしていたんですね。でも、今はファストフードは食べさせたくないし、なるべく化学調味料や農薬などを使っていないものを食べさせたいと思うようになりました。
澤田さん 子どもを連れていると、知らないおじいちゃん・おばあちゃんが「何歳?」とか「大事にしたってな」と声をかけてくれるんですね。地域にそういう優しい人がいると思うだけでも、自分の励みになるということに気づけて、うれしかったです。そして、私たち夫婦も将来そういう人になりたい、という目標を持つことができました。
岩田さん ひとりめのときに家事・子育てを完璧にこなそうとして、かたくなに自分の母にも近くに住んでいる主人の両親にも頼らないでいたら、親子ふたりで引きこもりのようになってしまったんですね。そんなときに下の子ができて、育てていけるのかと不安にもなりました。主人は、私が言うまで私の大変さがわからなかったようです。それからは、主人に言うようになり、主人の両親や自分の母にも頼るようになりました。子育ては自分のためにも子どものためにも、みんなでしたほうがいいんだなと気づきました。
礒部さん 以前は自分中心の生活でしたが、今はまず子どものことを考える自分になれました。自分のすべてを注げるような相手に出会えてよかったですし、自分の視野も広がりました。子育ては、子どもを独り立ちできるようにすることが最終目的なので、いま子どもにとって嫌なこともひとつの勉強と考えて、「ま、いっか」と思うようにしています。
若松さん 主人の両親と同居していて思うんですが、いろんな種類の愛情を持った人と触れ合うことによって、子どもは人との距離感を学んでいく気がします。子育てって、そのためのフォローを親がしていく、ということなのかもしれませんね。
後藤センター長 人のやさしさや愛情に包まれていることに気づくのは、素晴らしいことですね。子どもが自立して離れていくのは寂しいと思うかもしれませんが、離れていくのではなく、付かず離れず大人同士の関係を持てるようにしていく、ということではないでしょうか。