あのねっと 今号の特集テーマ 子育て、親育ち  

いま活用したい!子育てサポートin犬山市
2.中学生子育て体験事業 赤ちゃんの命を肌で実感し、子育ての楽しさ・大変さを体験する。
赤ちゃんはこうして生まれる
 「赤ちゃんて、かわいい」「お母さんは大変なんだな」。犬山市では、ふだん小さい子どもと接する機会の少ない中学生に、赤ちゃんやお母さんとふれあってもらう「中学生子育て体験事業」を、毎年夏休みに市民健康館「さら・さくら」で行っている。
今年は、東部中学校などの生徒41人が4日間に分かれて体験。そのうち、1年から3年までの男子生徒8人、女子生徒2人が参加した1日の様子を追った。
 まず体験に先立って、助産師と保健師が妊娠・出産や赤ちゃんの発育について講習。助産師の澤野光子さんは、胎児人形や出産シーンの録音テープなどを使いながら、「赤ちゃんは苦労して産道を通る経験をして生まれてくるので、これからの人生で何があっても大丈夫。皆さんはそういう力を持っているんですよ」と生命のたくましさを伝えた。
 また、保健師の中根久美さんは、誕生から12カ月間の発達について、絵本を教材にしながら「首がしっかりしてきたら縦抱きにしないと嫌がる」「ハイハイが上手になると動き回るので危険なこともある」などと説明した。お話のあとは、重さ8キロの妊娠シミュレータを体につけて妊婦の大変さを体験した。
 最後に、このあとの体験に向けて「赤ちゃんは不安で泣くかもしれませんが、皆さんのことが嫌いなわけではないので心配しないで」と励ましの言葉。生徒たちは、心の準備をして赤ちゃんが待つ別室へと移動した。
一対一で赤ちゃんとふれあう
 別室には、生後6カ月から1歳2カ月までの赤ちゃんとお母さん・お父さん10組。そこへ生徒たちが加わって全員で自己紹介したあと、生徒と親子がペアになり、質問カードを参考にしながら誕生日や好きなことなどをお互いに聞き取り合った。続いて、みんなで手遊びをしたり、タオルで「いないいないばあ」をしたりして、少しずつ“子育てモード”に。そして、大きなバルーンを使って全員で遊んだあと、カラフルなボールで赤ちゃんの気を引く間に、お母さんたちは懇談会のテーブルに移動。生徒たちは、一対一で赤ちゃんの相手をすることになった。
 最初は「どうすればいいの」といった様子だったものの、抱っこや「たか〜い たか〜い」などをして、なついてもらえるように働きかける生徒たち。中には、赤ちゃんがずっと泣き続けて、苦労する生徒もいた。一方、お母さんたちは「子どもが生まれて自分が変わったと思うこと」について話し合った。
15分ほどの“託児”を含め、約1時間の子育て体験を終えた生徒たちは、「バイバイ」と手を振って赤ちゃんに別れを告げた。
中学校へ“親子の出前”も
 犬山市の「中学生子育て体験事業」は、2005年にスタートし今年で5回目。毎年1校から参加希望者を募る形で行い、昨年で全4校を一巡した。親子の参加者は市の広報などで募集している。中学生の子育て体験を目的とすると同時に、赤ちゃんの親が自分の中学生時代をふり返ったり、わが子の将来を考えたりするきっかけづくりというねらいもある。実施にあたっては、助産師・保健師が講師に、主任保育士がふれあい体験のサポート役に、児童センター長が懇談会の進行役になるなど、いろいろなスタッフが協力している。
 事業を推進する鈴木園枝子育て支援センター長は、「中学生には、事前講習で生命誕生の重みを知ってから赤ちゃんとふれあってもらい、自分もこうして育ってきたことを知ってほしいですね。一対一にすることで、相手はこの子と決めて責任を持って預かってもらうようにしています」と話す。
12月には、子育て体験に参加した中学生による発表会を子育て講演会と同時に開催予定。今後はこの事業とともに「親子に中学校へ出向いてもらう子育て体験を全校で行いたいし、中学生が自由に来て赤ちゃんとふれあえるようにしたい」と抱負を語った。
命はつながっている
東部中学校1年吉門栞 さん
人形と違って本物の赤ちゃんは動くので抱っこしにくかったですが、泣かなかったのあやすのはラクだったし、笑顔も見せてくれました。勉強会では、自分の命がずっとつながってきていることや、生まれてから1カ月ごとに赤ちゃんが大きくなっていく様子がよくわかりました。将来、私も子どもを育ててみたいです。
打ち解けてくれてうれしい
東部中学校2年 中島桐生 さん
将来、自分も子どもを育てるかもしれないので、体験してみたいと思いました。赤ちゃんは、遊ぼうとしても興味を示してくれないときがあって、何をすると喜ぶのかを見つけるのが難しいです。赤ちゃんのお母さんは、この子は「いないいないばあ」やくすぐられるのが好きと教えてくれました。人見知りをする子だけど、打ち解けてもらえてうれしかったです。
お母さんに感謝したい
東部中学校3年正村光輝 さん
僕が担当した赤ちゃんは、ずっと泣いたりぐずったりしていて、あやし方がわからなくて大変でした。おもちゃを使ってもだめだったので、このあとどうすればいいのかと思いました。でも、赤ちゃんは小さくて幼稚園の子とは違うかわいさがあります。それに、自分のお母さんに対して感謝の気持ちがわきました。
多感な時期にいい経験をしてほしい
板津道代 さん(お子さんは1歳)
私も中学生のときに子育て体験をしてすごくよかったですし、多感な時期に小さい子とふれあうのはいい経験になると思うので、そういう機会に積極的にかかわりたくて参加しました。私とペアになった男の子は、照れくさくてどうしていいのかわからない様子だったので、私が彼の膝の上に子どもを乗せてあげたりしたんですよ。最後に「楽しかった。また赤ちゃんと遊びたい」と言ってくれたので、うれしかったです。うちの子は人見知りもしないしマイペースなんですが、力のあるお兄さんが遊んでくれたのはうれしいみたいでした。
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