あのねっと17号今月のテーマ 子どもの遊びと、おもちゃ・絵本
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 私は、子どもの心が躍動するような絵本が描けたらなあと思っています。『あっちゃんあがつく』は、いろんな食べ物があいうえお順に出てくる絵本です。これは以前、学童保育所の指導員をしていたときに、子どもが歌っていた「あっちゃんあがつくアイスクリーム」という、はやし歌を聞いたことがきっかけでできました。子どもの知っているものを極力描こうと思ったので、子どもたちが食べているお菓子なども調べて、リアルでちょっとユーモラスな絵にしたんですよ。
 『ぎゅうって』が生まれたのも、学童保育所での体験からです。当時小学3年生の女の子をひざの上に乗せて、ぎゅうって抱きしめてあげたら、「うれしいー!」って言ったんですね。いろんな遊びや世話を一生懸命にしていたのに、こんな簡単なことで喜んでくれるんだと改めて気づかされました。また、子どもがお手伝いをしたらシールをあげていたんですが、市販のきれいなシールより、私の手作りのシールを喜んでくれて、愛情を持って接することの大事さを痛感しましたね。
 絵本の仕事が忙しくなって、泣く泣く指導員をやめたあとも、子どもたちは学校帰りに自宅に遊びに来てくれました。お菓子を食べながらおしゃべりし、悩みをポロッと打ち明けてくれたりして、家に帰る前にちょっと立ち寄る”子どものスナック“のようでしたよ。日曜日の朝8時に「遊べる?」って来てくれたこともあって、夫が「お友だちが多いんだねえ」って(笑)。
 絵本作家になる前は、テキスタイルデザイナーをしていました。そして、30歳のとき、阪神淡路大震災の影響で体調をくずしたことや姑の入院などが重なり、2つめの会社を退職。もう一度、人生を考え直してみようと思ったときに、小学校の卒業文集に「絵本作家になりたい」と書いたのを思い出したんです。それに、デザイナー時代はずっと商品を作り続けて疲れている部分があったので、自分が本当に作りたいものを、じっくりと時間をかけて作ってみたいと思ったことも、絵本作家をめざした理由かもしれません。
 それで、クレオ大阪南という男女共同参画センターで開催された、手作り絵本教室に通い、その後、インターナショナルアカデミー絵本教室で学びました。始めた当初は、おばあちゃんになるころに出版できればいいかなという気持ちでしたが、絵本教室で制作した『よーいよーいよい』を出版してもらうことができました。『ぎゅうって』も、手作り絵本教室で最初に描いた絵本に手を加えたものです。
 手作り絵本教室に参加したメンバーで、絵本作りのサークル「ぴーかーぶー」を結成して8年目になります。古いメンバーとして残った私が、いつの間にか教える立場になってしまいました。初めは大人だけでしたが、今は下は1歳半から上は75歳まで、親子一緒に、あるいはおあばちゃんと孫が、夢中になって絵本作りをしています。
 小さい子もできる、しかけ絵本やうちわを使った絵本を作ったり。生きたサワガニをたくさん用意して、みんなでキャーキャー言いながら触ったあと、それを題材に絵本を描いたこともあります。最初は走り回っていた子も、そのうち作れるようになりますよ。1回2時間のうちに、何枚か描いた絵をとじて絵本を完成させ、3月に開催されるクレオのフェスタで1年間の成果を発表しています。
 手作り絵本のよさは、自分の子どもの好きなものを絵本にしてあげられるところ。自分の好きなものや自分自身が登場すると、子どもはすごく喜びますよね。私も、息子がクシャミに興味を持っていたころ、サインペンで顔の絵本を描いてやると、何回も何回も見てくれて、ひとりでニヤニヤ笑ったりしていました。それと、親子一緒に作るとコミュニケーションが深まるし、親も子も一生懸命で、中身の濃い時間を共有できるのもいいですね。子どもが寝ている間に作って見せてあげるのも、喜ばれると思います。
 うちの息子は、いま1歳半。結婚10年目に生まれたスイートテン・ベイビーです。息子も絵本が大好きで、毎晩、寝る前に8冊ぐらい読まされています。それも、1冊につき2〜3回ずつ。「もう寝ようよ」という気分になってくるんですが(笑)。2〜3カ月のころから絵本を見せていたんですが、息子の反応を見ていて、6カ月ごろには、あまり表現はできないけれども、理解しているんだなと感じました。
 やっと恵まれた子どもですし、今はとても貴重な時間だと思うので、ゆっくり子育てしたいという気持ちもあります。でも、ありがたいことにお仕事の話をたくさんいただき、出産の直前直後も絵を描いたりして、仕事と子育てについて、ちゃんと考える間もなく仕事をしてきたという感じです。
 今は、毎日午後1時から5時まで、自宅で両親とベビーシッターさんに交替で子どもを見てもらい、その間に2階で仕事をしています。限られた時間なので、子どもがいなかったときよりグッと集中できますし、子どもと少し離れられるので、とてもいいバランスで両立できています。子どもはちょっとしたことで喜ぶので、これからの絵本制作では、たとえば電気をつけたり消したりするような、たわいのない遊びをテーマに描いてみたいなと思っています。
(取材日/2004年7月27日)
1966年堺市生まれ。嵯峨美術短期大学洋画科卒。インテリアテキスタイルなどのデザイナーを経て、インターナショナルアカデミー絵本教室に学ぶ。現在は、絵本の創作をしながら、親子で参加できる手作り絵本サークル「ぴーかーぶー」で、手作り絵本を広める活動を行う。作品は『あっちゃん あがつく』『ぎゅうって』『はるちゃん、ね』『おいしいおとなあに?』『きしわだのだんじりまつり』などのほか、『クーヨン』など月刊誌でエッセイも執筆。港南造形高校の特別非常勤講師も勤める。