ケース2
働くために子どもを預けることに対して賛否両論ある。子どもの気持ちについては、どう考えればいいのか。また、外で働く母親への理解は妥当だろうか
子どもを預けるのは罪?
秋田さん  子どもに「お母さん、夜仕事に行くけど、どう?」と聞いたら、下の子はいいと言ったんですけど、上の子はいやがるんですね。何とか説き伏せて働いていますが、最初に預けたときには、小学2年なのに次の日におねしょをしてしまって…。子どものことは気になりますが、仕事を切られたくないので引き受けてしまいます。私の母からは「子どもがかわいそうだ」と叱られますし、周囲も同じ意見の人が多いですね。私自身も、子どもに寂しい思いをさせているのではないかとか、夜子どもを預けてまで本当にしたい仕事なのかと悩んでいて、次の講座を引き受けるかどうか迷っています。

光部さん  うちの場合は「お母さん、仕事に出かけるけどいい?」と聞くと、子どもはふたりとも喜ぶんですよ。なぜかと言うと、ゲームができるから(笑)。隣に住む私の両親が子どもを見てくれますが、私がいない間、子どもたちが何をしているのかわからないのがちょっと不安です。でも、私が忙しいと家事を手伝ってくれて、子どもが自立してきたと思う面もあるので、どちらがいいかは答えにくいですね。低学年の間は親が見ていないといけないかなと思う半面、私自身は働くようになってから、子どものことで悩み過ぎなくなりました。

加藤さん  私が大学に行き始めたのは、子どもが6年と4年になってからなので、留守番させても不安はありませんし、帰りが遅くなるときは、夫の両親が預かってくれています。子ども会の会議で夜出かけるときも、光部さんのところと同じで喜んで送り出してくれて、9時半ぐらいに帰っても寂しがっている様子はないですね。基準がなくて賛否を決めるのは難しいですが、子どもがすごく寂しそうとか、自分がすごく心苦しいわけではなくて、まわりに協力してくれる人がいるのなら、預けてもいいという気がします。それに、親としては子どもに寂しい思いをさせていると罪悪感を感じがちですが、子どもが本当に寂しいかどうかは疑問が残ります。

典子さん  子どもを預けて働くのはいいと思いますが、子どもに負担をかけないことが第一条件だと思います。私は、子どもが保育園になじめなかったら仕事をやめる覚悟を決めていたんですが、子どもは楽しんでいるみたいです。実は、子どもが1歳のころにも保育園に預けて働いたことがあるんですが、仕事を休みづらかったので、子どもがカゼをひいても預けていたら肺炎になってしまって…。こんなことをしちゃダメだと思って、今はそういう時期ではないと仕事をやめました。子どもが3歳になって、今なら大丈夫かなと思ってまた仕事を始めました。

光部さん  子どもを預けることについては、私は自分のやりたいことをしたいタイプなので、子どもが許してくれるならやった方がいいと思います。ただ、いま振り返ってみると、もう少し子どもと過ごす時間を大切にすればよかったかなと思うこともあります。子どもは保育園で友だちができて楽しんでいたようですが、私の方が寂しさを感じてもっと子どもと関わればよかったかなと。

稲垣さん  子どもを預けることは罪ではないと思いますし、子どもが親と離れて寂しい思いをする面はあっても、その一方で子ども同士の世界が広がるなど、成長につながる面もあると思います。子どもは、最初は泣くことがあってもだんだん慣れて、楽しかったことを親に報告するようになるものですしね。
 秋田さんは仕事を続けるかどうか悩んでいらっしゃるようですが、お仕事は春と秋の一時期で週1回とのことですから、それ以外の日は子どもと一緒に過ごせるわけですよね。仕事は、チャンスが来たときに、つかめる準備をしている人のところに来るものだと思いますから、チャンスを大事にした方が悔いが残らない気がします。ただし、自分がしたいことと子育てに一線を引いて、そのペースを守ることが必要でしょうね。それと、仕事に対する自分の思いを子どもに伝えたり、可能なら仕事をしている姿を見せてあげたりすると、子どもなりに理解していくのではないでしょうか。
ケース3
外で働く母親に対して、夫や周囲のサポートはどういうあり方がよいのだろう。また、専業主婦のサポートについて、皆さんはどう考えているのだろうか
夫もできることはしてほしい
泰宣さん  夫のサポートと言われると、耳が痛いですね(笑)。いま皆さんの話を聞いていても、ダンナさんに子どもを預けるという話は出てこないですもんね。女性が社会に出ていくことを考えたら、男性がもっと家庭に目を向ける必要があると思います。うちのカミさんの場合、仕事をしながら家事・子育てをしていると両方でイライラが募りますから、なるだけ僕が休みの日に子どもを外に連れ出して、ひとりになれる時間をつくってあげるようにしています。平日も、残業しないで早く帰る曜日を決めるようにしているつもりですが、カミさんは満足しているかどうか……

典子さん  心構えは素晴らしい(笑)。平日は帰りが遅いですし、家事は全く手伝ってくれませんが、家事を手伝ってほしいとはあまり思わないんですね。それよりも、母親の精神面が子どもにいちばん影響すると思うので、煮詰まったときに話を聞いてくれるとストレス解消になるし、休みの日に2〜3時間、子どもと公園に行ってくれるだけですごくスッキリします。疲れてちゃんと話を聞いていなくても、話す相手がいるだけでいいので一方的にしゃべってます(笑)。

秋田さん  私もまったく同意見です。男性の意識改革は必要だと思うんですが、現実的には会社を休んでまで手伝ってもらうのは難しい。でも、手伝ってくれないと腹が立つので(笑)、大きなことは期待しないようにしています。だから、せめて私が話しているときは聞いているふりだけでもするとか、脱いだ服は洗濯機のところに持っていくとか。小さなことでいいので、できることをやってくれれば満足ですし、子育ては大変だとわかってくれるだけでありがたいと思います。

光部さん うちの夫は、私が寝ていても洗濯物を干しておいてくれたり、洗い物をしてくれたりします。だから、私が忙しさのあまりイライラして夫に当たったりしないように、仕事量を調節しています。それと、少しお金はかかりますが、民間会社やシルバー人材派遣センターに掃除などを頼むこともあります。

加藤さん  家庭によって本当にいろいろなんですね。うちの夫は、洗い物が残っていると「早くやれ」と私を起こします。子どもが小さいときは、何とか夫の意識を変えようとしてよくケンカをしましたが、無理だと悟って、相手を変えることにエネルギーを投入するよりも、すき間を狙って自分のしたいことをしようと思いました。ただ、子どもにしつけをする手前、夫にも自分の食器は流しに持っていってもらうようにしましたし、今は単身赴任をしているんですが、自分で洗濯をするようになったので少し驚いています。

稲垣さん  仕事と子育ての両立でいちばん大変なのが、仕事を休めない状況で子どもが熱を出したりしたときですよね。保育園でも学童保育(放課後児童クラブ)でも、一定以上の熱が出ると預かってくれませんから。だから、預け先というサポートを考えたときには、ひとつだけではなく、実家が近ければ祖父母に協力を頼んだり、近所に子どもを預け合える仲間をつくったりして、いざというときにお願いできるようにしておく必要がありますね。
 専業主婦の方でも、上の子を病院に連れて行くときに下の子を預けたいとか、美容院に行きたいけど夫の休みと合わないといったときには、地域のファミリーサポートセンターを利用する方法があります。また、専業主婦同士だからこそ、近所のお友だちとの相互託児もしやすいと思います。地域によっては、ちょっとした助け合いという感覚で、近所のお年寄りの方などが子どもを見てくださる場合もありますから、日ごろから地域とのつながりを持っておくことも大事でしょうね。