専門家に聞きました。

子どもの自立Q&A(お答えは長嶋先生)

あいち小児保険医療総合センター   
センター長・小児科医長嶋正實 さん

心配なわが子の発育。親はどう向き合えば?
子どもの成長には個人差があり、親の思い通 りにならなくて、悩んだり不安になったりしますが?

 子どもの発育に関してお母さんがすごく不安を持っていることは、「育児もしもしキャッチ」(※)への相談の多さからも感じます。確かに発育には個人差があり、たとえば歩き始める時期でも、生後10カ月ぐらいから1歳半ぐらいまでとかなり幅があります。そのために、ほかの子と比べてうちの子は遅いのではないかと、あせりが出てきてしまうようですね。
 また情報過多になっているので、何歳までに何ができなければ、という考え方にとらわれている人が多いと思います。それに最近は、発育のことだけでなく、「多動」や「自閉」といった言葉が世の中に出回るようになった影響も出ています。ちょっと子どもに落ち着きがないと多動ではないかとか、子どもが母親の方を向かずに自分の好きなことばかりやっていると、自閉ではないかとか。むしろ、お母さんの方が半分病気のようになって相談に来られます。でも、実際に診察をしてみると異常がない場合がほとんどです。
 私は、体の発達において大事なのは親子のふれあいだと思います。走る、飛ぶ、投げる、高い所から飛び降りる、といった基本的な動作は、幼いうちに習得されるもので、親子で遊ぶなかで身についていきます。もし幼い頃にあまり運動しない習慣がついてしまうと、その後の体力にも影響が出てきます。ここ10年間ぐらいの間に、子どもの体力が5〜6%も落ちているという調査結果 があります。また、転んだときの受け身がへたなのか、子どもが骨折しやすくなったという現象も起きています。
 子育てはつい母親まかせになりがちですが、子どもの発達のことを考えたら、体を使った遊びに適した父親が、もっと子どもと遊ぶ時間を持てるといいですね。一緒に野原を走ったり、ボール投げをしたりと、体を使って遊ばせてほしいと思います。
親の接し方しだいで子どもに変調が?
親が子どもの発育を気にするあまり、たとえばチックなど子どもに病的な症状が出てしまうことはあるのでしょうか。もし症状が出た場合、小児科ではどのように対処されるのでしょうか?

 たとえば、おしっこの近い子どもがいるとします。何度もトイレに行くのをお母さんが気にして、「また行くの?」と心配そうに聞く。そうすると子どもの方も不安になり、それほどおしっこをしたくなくてもトイレに行ってしまうことがあります。また、チックは神経質な子どもに多いんですが、親が「また目をパチパチしてる」と言ってしまうと、子どもの神経がそのことに集中してしまい、症状を悪化させることがありますね。
 親の対応としては、「子どもにはありがちなことだから」と広い気持ちになって、放っておくのが一番いいですね。だから、私たちもお母さんにいろいろ説明して、「心配しないように」「黙っていて」とよく言っています。また子どもには、「病気ではないよ。トイレに行きたければどんどん行きなさい」と話します。それによって、そんなに心配することではないと子どもが理解すれば、ケロッと治ってしまいます。軽いチックでもそういう面 はありますね。
 ただし、ひどいチックの場合は、子どもに精神的なストレスがあり、その吐け口がなくてチックとして現れていることもあります。そういうときには心理的な治療をしたり、薬で治療したりする場合もあります。

※「育児もしもしキャッチ」とあいち小児保健医療総合センターについての情報は、17ページをご参照ください。