みんなの・しゃべるーむ
ケース1
子どもはいつ頃、どういう形で親から離れていくのだろう。子どもが離れていってしまうと親は追いかけたくなるが、それはいけないことなのだろうか?
追いかけると、逃げられて…
編集部  はじめにお子さんの年齢や学年をご紹介いただき、続いてケース1について考えをうかがいたいと思います。

近藤さん  うちには3人の男の子がいて、上から小学4年生、2年生、保育園年中です。子どもたちが離れていくという感じは、まだありません。ただ、一番下の子に対しては、保育園に入る前は1日中一緒にいたので、たまには離れたいと思っていたんですが、いざ保育園に入ってしまうと、小さい子を見て懐かしいなという気持ちが強くなりました。一番上の子は、時々ベタッと抱きついてくるんですが、私の方からくっついていくと嫌がられてしまうので複雑な気持ちです。

高橋さん  子どもは小学5年生の男の子と、3年生の双子の女の子です。上の子にはもう自分の世界があり、勉強も習いごとも自分からしていて、そういう点では親離れしていると思います。むしろ、私の方が子離れしていなくて話しかけたりするんですが、息子は「知らない」とそっけないですね。いつもふたりで遊んでいる下の双子にも、私が入っていこうとすると「なんでママ来るの?」と言われて…。下の子たちには、小さいときに忙しくてあまり遊び相手になれなかった分、いま手をかけてあげようと思っているんですが、時すでに遅しという感じです(笑)。

伊原さん  私には幼稚園年少の男の子と2歳の女の子がいます。親離れの実感はまだありませんが、今年、幼稚園に入った上の子が、泣かずに「行ってきます」と言えるようになったとき、これが親離れの第一歩なのかなと思いました。親離れは早くしてほしいですが、実際に離れていくと寂しくなるんだろうなと思います。すでに今でも、同居する夫の両親が出かけるとき、子どもたちが「おじいちゃんたちと行く」と言ってついて行ってしまうと、寂しい気持ちになります(笑)。

大薮さん

 子どもは小学2年生の女の子と幼稚園年長の男の子です。下の子が反抗期に入り、それまでは「お母さん、お母さん」と甘えていたのが、私が何か言うと「うるさいよ」と大人びた口調で言うようになりました。親離れのひとつの段階とは思いますが、思ったより早く反抗期が来た気がして、寂しくて「どうして? どうして?」と追いかけてしまいます。上の子は、小学校に入るまでは甘えがありましたが、家族みんなが忙しいことを知っているので、自分のことはほとんど自分で決めてやるようになりました。


丸山さん  離れていく子どもを追いかけたくなったり、子どもをおばあちゃんに取られそうと思ったり。あるいは、まだ小さいうちは親離れできるかと不安になったり。それが、いざ自分が働きに出るとなると「助かっていいわ」とおばあちゃんに頼んでしまう。そして、仕事が忙しくなれば、子どもは元気に食べて寝てるから「まあ、いいか!」となるかもしれない。  親には親の感情や都合があり、子どもには子どもの感情や都合があって、双方のバランスがいいときは関係もいい。でも、子どもの年齢や環境が変わればバランスはとれなくなるんだし、むしろ関係が変わっていくのは健全だと思いますね。  子育てって、いろいろな感情をわき立たせてくれるから楽しいと思うんです。だから、子どもを追いかけたくなるのもOK。子どもがいつ頃、どういう形で親離れしていくかは、子どもの個性や環境、親の生き方によって違ってきますから、それぞれのありようが正解だと言えるのではないでしょうか。
ケース2
日常生活で、親は子どもの世話にどこまで手を出したらいいのだろうか。子どものためではなく、親が安心するために手を出してしまうのでは?
親はどこまで手を出す?
編集部  親がどこまで手を出すかというケース2については、いかがでしょうか。

高橋さん  下の子たちは、ハンカチや名札などの持ち物を一カ所に集めておくと自分たちで身につけていくし、着ていく服も自分たちで選んでいます。でも上の子は、学校のしたくは自分でするんですが、男の子だからか服には無頓着なんです。それで私が用意していると、夫から「いい加減に、自分でできることはさせろ」と言われます。本当は、洗濯物の片づけなども子どもにやらせた方がいいと思いますが、そうするとタンスの中がグチャグチャになるし、宿題や習いごとで時間の余裕もなくて。それに私自身の安心感のためにやっている面 もあるかもしれません。

近藤さん  私はどちらかというと手を出さない方だと思います。自分が面倒くさいというのもありまして(笑)。次男はパーッと抜けていて、学校の連絡帳も見せないんですが、私がカバンから出したりはしないですね。そうすると学校で困ることもあるんですが、私は根負けせずに見せてくれるまで見ないという姿勢で闘っています。長男はきちっとしているんですが、几帳面さがアダになることもあり、また一番下は「今日だけやって」とか言うのでやってあげたり。3人とも性格が違って、親の対応の仕方もそれぞれ違いますね。

大薮さん  上の子は、学校の先生が厳しいので、忘れ物をしないよう自分から連絡帳を見せます。服も自分で用意しますし、私がいなくても自分でやれることはやってくれますが、マイペースなのできちっとできないことが多いですね。習いごとがあるので、家の手伝いはあまりしていません。下の子は几帳面ですが、服の準備などは「用意して、お願い」と言われると、「まだ小さいから仕方がない」と手を出してしまいます。すると、上の子は「お母さん、どうして手伝うの?」と言うんですが、上は女の子のため、できると私が安心しきっているところもあるからですね。

伊原さん

 上の子は自分で服を着たり、ボタンをはめたりできるんですけど、今日みたいに出かける予定があると私が全部やってしまいます。自分でやりたがるんですが、「そこに立ってなさい。手は出さなくていいから足を出して」という感じで(笑)。「早く起きて!」「早く食べて!」とせかしてばかりで、子どもにとってはいい迷惑ですよね。子育てサークルの日だからとか、スーパーに行きたいからと子どもを連れ回し、子どものやりたい気持ちを押さえつけるときが多くて、いけないなと反省しています。


丸山さん  子どもには、将来、自分で生活していける力をつけさせたいから、親としては自分のことを自分でできる人にしたいと思うものですよね。でも現実の日常生活は、思い通 りにいかないことばかりです。皆さんのお話を聞いていると、そうした理想と現実のギャップが言葉として語られているのかなと思います。
 今の日本社会は、男性が外で働いて女性が家庭に入るという状況です。だから、女性は子どもと向き合う時間が長くなり、つい日常の細かいことが気になってしまいがちです。子育て中は日々の生活に追われてしまいますが、ときには将来のことも意識する時間を持ちたいですね。  「男の子だから」「女の子だから」という意識はまだ根強いですが、これからは男女とも働かないと食べていけない社会になっていきます。また、大学生になれば男の子も自炊生活をしなければならないことがあります。たとえば、ジャガイモのゆで方は水からかお湯からかという手順は、体験しないとわからず、現実にぶち当たったときに困ります。子どもの頃なら、料理も遊び感覚や科学的関心で経験できるのに、親の安心のために、そして「男の子だから」という意識のために、その機会を奪っていいのでしょうか。また、家の手伝いよりも習いごとを優先していいのでしょうか。親の価値観が問われるところです。どうすれば、親も安心しつつ子どもに生活能力が身につく環境がつくれるか、工夫したいものですね。