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- 汗かくメディア2013【記録】
第7回目となった「アートと遊びと子どもをつなぐメディアプログラム2013 汗かくメディア」では、アナログとデジタルが融合し、普段見慣れているアナログのモノや行動が新しい遊びとなっていくことを目の当たりにすることになりました。
《おスイッチ!》は、だんだんと見られなくなってきた昔からある「カチッ」という音が小気味のいいスイッチを押すことで、通常のスイッチでは起こり得ない反応を楽しむことができ、《光のコンパス:まるの王様、だーれだ!》では、自分の動きとデジタルによる反応がダイレクトに体験でき、その驚きは大きいものでした。《ジロジロ・キョロキョロ》では、人の動きを追って動く「大きな目玉」と参加者のコミュニケーションが自然と生まれ、遊びがどんどんと展開していきました。
どの遊びも子どもはもちろんのこと、とりわけ大人たちが興味を持ち、驚き、楽しんでいる様子があり、大人と子どもが一緒に楽しめる遊びを提供してきた当センターにとっても示唆に富んだ内容となりました。
(※14日間の公開展示期間に、延べ8千人以上の人が新しい遊びを体験しました。)
◎おスイッチ![はんだコテコテ]
タッチパネルなどが普及する中、あえて機械的なスイッチが持つ感触や音などの心地よさに着目しました。様々な動きをするスイッチに触れ、触覚・視覚・聴覚で楽しむ空間を提案します。スイッチを押すことで体を動かしたり考えたりして、感触や操作の反応を楽しむことのできる作品です。
感想
期間中は大勢の方に《おスイッチ!》を遊んでいただき嬉しく思います。あそびに対する子どもたちのパワーは凄まじく、ときにはスイッチが壊れることもありましたが、度々修理を行いつつもなんとか展示期間を乗り切ることができてほっとしています。作品が壊れてしまうのは残念なことですが、子どもたちが本気で遊んでくれたことの裏返しだとすれば、それも些細な事に思えます。
会場に設置した各《おスイッチ!》には遊び方の説明を付けていませんでした。子どもたちが遊び方を見出してくれることを期待し「こういう機能のスイッチを、こう設置したら、こんなふうに遊んでくれるのではないか?」などとメンバーで色々話し合いながら展示計画を練った結果です。実際の展示では、こちらの意図通り遊んでくれる場合もあれば、そうでない場合もあり、また全く予想外の遊び方を見つける子供が出てくる場合もありで、インタラクションデザインの面白さ、難しさを実際に経験することができました。
メンバーの間には、沢山のスイッチで空間を埋め尽くしたいという想いがあって大量のスイッチを作ることとなりました。そのため膨大な時間と労力をつぎ込むことになり、この夏はひたすらスイッチ漬けの毎日だったことが思い出されます。それでも、展示初日に子どもたちから「楽しかった!」と感想を聞いた時には、グループのメンバー一同、制作の苦労も報われた思いでした。
◎光のコンパス:まるの王様、だーれだ![椎橋怜奈+関りん+MoonWalkers]
この作品は、体を使って光のまるを描く遊びです。大きなコンパスを使って上手くまるを描くことができると、光のまるが飛び出します。遊んだ体験をとおして、いつもの風景のなかにも図形や面白いものを発見する力が養われるきっかけとなれればと願っています。
「まるを描く」というシンプルな遊びにもかかわらずプロセスが多いため、展示する前は子どもたちに楽しんでもらえるか少し不安でした。ですが、実際に遊んでもらうと、王冠をかぶることを楽しんだり、「点がついてくる!」と喜んだり、「きれいなまるを描く!」とはりきったり、待っている子は「次は何がでるかな?」と予想したり、遊ぶ人によってプロセスに楽しさを見出していて、驚きました。また、親子や友達同士で言葉を交わし息を合わせながら、様々なまるが生まれていき、そこに二人の関係が表れていることがとても印象的でした。もう一つ印象的だったのは、チャレンジタワーという場所です。子どもたちが螺旋のスロープをグルグルと駆け回る下で、まるを描く。それをまるいベンチに座って見ている子もいる。タワーのなかはまる尽くしで、この遊びを展示するにはとても魅力的な場所でした。
また、汗かくメディアに応募したころ、この遊びは大きな針と鉛筆を使ってまるを描くというものでした。ですが、試作を重ねセンターの方と意見交換をするなかで、王冠という装着型のものに変わり、最終的には走って遊べるものになりました。これほど長い期間にわたり遊びを作り上げていく経験がなかったので、この試行錯誤の過程は非常に貴重な経験となりました。
これからも、デジタルな技術をアナログな思考で使いながら、汗をかくような作品をつくっていきたいと思います。
◎ジロジロ・キョロキョロ[藤堂高行]
コンセプトは「生きもののような作品と戯れる」ことです。大きなふたつの目玉はまばたきしたり、瞳孔が開いたり縮んだり、本当の目のような動きをします。この大きな目玉がこちらに視線を向けることで、巨人がこちらをじっと見つめているような、あるいは自分が小人になって人に見られているような感覚になります。
感想
本作品は、人間の目と同じように、一度に一人の人しか見ることができません。
動きの大きい人の方へよく向くように作っていましたが、センサーやプログラムの関係上、どうしても、よく見てもらえる人とあまり見てもらえない人が出てきます。
視線を引きつけるのが得意な子は、没頭してずっと遊んでいたり、いろんな動きを試したりする一方で、なかなか自分の方を向いてくれない子は、悔しがったり、すねたり、飽きてしまったりする様子も見られました。そして、それでも子ども達が一生懸命からだを動かして視線を自分の方に引きつけようと競争する様子はとても健気で、なにか不平等で可哀想なあそびをさせてしまっているような気持ちさえ覚えましたが、あえてそのまま遊んでいただきました。
反応が大きくて面白かったからです。
なぜあの子ばっかり見て、あまり自分を見てくれないのか?
たまに自分の方を見てくれるのはどうしてなのか?
そのルールがわからないから、気を引こうといろいろ試してみる。
子どもも大人も、感じることは同じなのかもしれません。
もちろん小さい子どもの中には、怖がって逃げる人も見られたし、その中で、お父さんお母さんの影に隠れてこっそり覗き見ようとする子どもも見られました。また目玉に見られないようにそろそろと近づき、見られたら逃げる、というような遊び方をしはじめた子どもたちもいました。