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『汗かくメディア』として第6回目となった今回の公募では、いずれもプロジェクターとセンサーを使うという共通点をもった3作品が選ばれました。センサーはそれぞれ種類が違いますが、人の動きを感知してプロジェクションによって映像をみせるという点で共通しています。
触れないはずの映像へ手をのばして映像をつかまえる《ほしむすび》、自分が動くことで画面を縦横無尽にかえていく《ヒトフデ》、跳躍という行為に焦点をあてて映像と音で遊ぶ《ピカピカトランポリン》。
同種類の「メディア」であっても、その使い方、見せ方(魅せ方)は三者三様で、遊ぶということの可能性と広がりをあらためて実感することとなりました。
(※14日間の公開展示期間に、延べ1万5千人以上の人が新しい遊びを体験しました。)
◎ヒトフデ(人筆)[石原由貴]
作品解説
筆跡というものは、みんなそれぞれ違います。それはひとりひとりの手の形、好み、使う道具といった条件がバラバラであるためです。この作品では、それを体全体のこととして捉えてみようと考えました。
子どもは常に動いています。また、体の大きさも様々です。この作品のすることは至ってシンプルで、上部に取り付けられたカメラが人の動きを感知して、その跡をほぼそのまま、スクリーンにプロジェクターで映し出すだけです。しかし、跡は筆で書いたように不揃いで、自分の体の大きさや、動きによって各々異なったものとなります。
どう動いたらどんな跡が残るのか?太い線、細い線、ギザギザな線、真っすぐな線を自分が出すためにはどうすればいいのか?何人かでやるとどうなるか?バラバラで?それとも足並みをそろえて?動きまわることで「発見」をしたものを、次の動きに取り入れて「創造」してゆくという流れを感じていただけたら、大変嬉しいです。
汗をかきながら直感的に、しかし様々な描き方を考えながら遊んでもらいたい作品です。
感想
まず、子どもたちのパワフルさにびっくりしました。7メートル四方ほどの空間を縦横無尽にかけまわったり、布を振り回したりして動きまわる様子に、子どもたちの底知れぬ体力を感じました。一区切りがつくと「あつい〜」「つかれた〜」と倒れこみながらも、すぐに次の遊びに向かって走りだしてゆくので、本当に疲れ知らずだと感心しました。でも遊んだあとは汗だくで、真剣に遊んでくれたのを感じ、大変嬉しく思いました。また、《ヒトフデ》には白いカーペットが敷いてありましたが、毎日展示が終わる時間には白い毛玉がたくさん残っていて、いかにたくさんの子が一生懸命に走り回ってくれたのか実感しました。
また表現についても、多くのことを試してくれました。子どもたちはグルグルと駆けまわったり、横へゴロゴロ転がってみたり、側転をしてみたりと、大人にはできない大きな動きをたくさん実践してみせてくれました。また布を振り回したり、投げたり、畳んでみたり、同じ道具でも各々が様々な使い方を発見してお互いのやり方を試してみていました。大人の方は手を使って跡をつけたり、布を腕に括りつけたりと、細やかな表現を試す姿を見ることができました。人によって行動が違うので、見ていて飽きず、楽しかったです。
多くのお子さん、そして大人の方に楽しんでいただけて、大変嬉しかったです。
◎ほしむすび[チームとるとる]
作品解説
スクリーンや、周りの壁に映し出される美しい星空の中に、動き回る星がいくつか現れ、これらの星を、手のひらの中に捕まえるように追いかけるあそび。スクリーンに映し出された星をすべて捕まえると、星どうしがその場でとまり、お互いに白い線で結ばれ、星座のようになります。捕まえた場所によって、その時々で様々なかたちで星が結ばれていくことになります。星座になった星達は消えていき、また、新しい星が現れます。
大きなスクリーンなので、飛び回る星を一人で捕まえるのは至難の業。何人かで一緒に遊び、加えて、その人たちとコミュニケーションをとり、協力しながら遊ぶことが必要になります。
汗かくメディアということで、『全身で遊ぶ』をコンセプトに位置づけました。
思い切り身体を動かすのはもちろん、遊びの中で生まれる人とのコミュニケーションや、美しい映像によって様々な方向から、心の運動にもなってくれたら、という思いで作っています。
感想
はじめ、この賞をいただくことが決まった際、《ほしむすび》は全く別の姿をしたプログラムでした。その後、検討、修正を重ね、たどり着いたのが、《ほしむすび》のかたちでした。
このかたちになるまで、さまざまな問題や、迷いに直面し、メンバー一同頭を抱えることもありました。しかし、本番を迎え、二週間にもわたって今までに経験したことのないほど多くの方々に自分たちの作品に触れ、楽しんでいただくことが出来ました。
実際に展示してみると、机上で考えていた子どものイメージとは異なる部分も多く、戸惑いも有りましたが、私たちの作ったものであんなにも多くの方に笑顔になっていただくことが出来るんだ、と、とても感動しました。
デザインを学ぶ者として、本当に大切なことを改めて教えていただきました。
まだまだ未熟でプログラムにも足りない部分は多くあったと思いますが《ほしむすび》で遊んだことが、子どもたち、その家族のみなさんの中でひとつの記憶としてのこっていってくれたならこんなに嬉しいことはありません。
このプログラムの企画の立ち上げから、受賞、展示に至るに渡って長い時間でしたが、すべてがかけがえのない経験になりました。
◎ピカピカトランポリン[NODE]
作品解説
《ピカピカトランポリン》は人が普段あまりしないような動きを取り入れようということで「跳ぶ」アクションを扱いました。
トランポリンには距離センサーが取り付けられており、跳んだときの深さで映像と音が変化する仕組みになっています。この映像は、それぞれのトランポリンで跳んだときに異なるパターンを生成するようになっていて、何人かが同時に跳ぶことでより賑やかな場をつくり出します。
映像と音はレトロな遊園地を意識してあえて少しビットレートの低い表現にしました。
感想
今回の展示にあたって、たくさんの子どもに遊んでいただいてよかったと思います。
なんとか会期中もちましたが、やはり大勢の方が体験されるものなので耐久性の面でいろいろと改善が必要だと思いました。思っていたよりもトランポリン自体に興味を示す子どもが多かったのが意外でした。単純な跳ぶ道具なのですが、子ども達がそれぞれ面白い跳び方などを考案しているのが印象的でした。