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◎ビュートレス[河村るみ]
作品解説
ビュートレスとはview(風景)をtrace(なぞる)を繋げた造語です。 子ども達が遊んでいるセンターの風景を映像で撮り、壁に映しだし、その映像の中の建物の丸、三角、四角といった形を見つけてなぞるという遊びです。そのうちになぞる箇所が少なくなり、できた形の中を塗っていこう、と発展させていきました。1日の最後に映像が消えて、皆で描いた風景画のみが現れます。描かれた絵は記録し、その日のうちに消してしまいますが、毎日増えていく絵をスライドで流しました。一つの映像から、一つとして同じではない風景画が出来きあがります。私は絵を描いている人としてその場所で毎日なぞって遊んでました。
今回の展示では、出来上がった作品装置をただ設置するのではなく、愛知児童センターという場所を取り込んで制作できたらと思い、この施設がどんな特徴をもっていて子供達がどんな風に遊んでいるのか、実際に現場を見て考えました。当初、「絵を描く事」を自由にするつもりでしたが、センター内ではこの自由が、逆につまらないものの様に感じられたので、建物の中に意識的に作られた形を使って、「風景の中にある形をなぞる」というルールを作りました。なぞる事は抵抗なくだれでも簡単に出来ると思い、そのなぞる事の延長に絵を描く事が自然に立上がってくる、そんな遊びにしました。
感想
壁に直接描く事自体、あまり経験する事がないので、線を引けるだけでうれしそうな顔をしている子、「これ、楽しい!」と 子どもより大人が描いていて、それを見て、また小さなお子さんも楽しそうに真似してなぞっていく。集中して描く子は1時間でも2時間でも遊んでいました。そのうちコツを憶えて、少し離れた方が線が見えやすいとか、自分の陰で線が見えなくならない様に工夫したり、まだなぞられていない、手の届きにくい上の方を一生懸命描いていました。そんな子に楽しいねと描きながら話しかけると、「うん!」と返事が来るのがうれしかったです。この遊びをした後に、実際に見る風景や遊ぶ場所がすこし違うものになっていたら素敵だなと思いました。また、興味深かったのは子ども達に、作品の説明をして下さるスタッフさんの違いで、出来上がってくる絵が変わってくる事でした。あるスタッフさんの日は必ず渋い風景画が出来上が ってました。場所や人との関わりあいで変化していく事の面白さを再認識させて頂きました。
*Tomas Svab
◎NOBYON[木下智加]
作品解説
どこの家庭にもある素材、ゴムやひもに着目し、いつもとはちょっと違った使い方をしてみました。 張りめぐらせたひもをゴムとび(ゴム段)遊びをする時のように、足で踏んだり、ひねったり、ひっかけたりすると、ひもの伸縮やたわみによって様々な音が鳴ります。踏み方を工夫したり、遊ぶ人数によっても鳴る音が変化します。 普段何気なく存在し、特別意識を持たずに使っている身近な「物」が少し違う目的や、想像しないような使われ方をしたら?それが例え小さな変化でも、それは「物」の新しい価値を発見したことになると考えています。どこにでもある物でも今までとは違うまったく新しい体験ができるかもしれません。日々、新しい発見を探しています。
感想
非常にシンプルな仕組みですが、身体をよく動かして遊ぶ作品ですので、公開期間中、作品自体が物理的に耐えられるのかどうかがとても心配でした。設置に関しては私自身も大量の汗をかきました。 期間中は本当に様々な年代の人に体験してもらうことができました。 歩き出したばかりの小さな子も不思議そうな顔をしながら遊んでくれたり、知らない子同士でもいろんな音を出そうと協力したり、普段大人はなかなかやらない動きですが、子どもよりもはまって何度も遊びに来てくれたお父さんが印象的でした。 大人も子どもも隔てなくみんな笑顔で汗をかきながら遊んでいる姿を見ると、とても感慨深いものがありました。 私の場合、作品のアイディアはほとんど身の回りにある「物」から着想を得る事が多かったのですが、いかにして汗をかかせるか。夢中にさせられるか。というところからもヒントを貰えそうです。 今回の展示の経験をこれからの作品にも昇華させていきたいと思いました。
◎the blue garden[柴田悠基 (color_4)]
作品解説
砂の上に投影された海と魚たち。 投影された海の映像の中には、人を見つけて寄ってくる魚や追いかけられて逃げていく魚が泳いでいます。ひんやりとした砂の海に裸足で入り、たくさんの魚たちと遊びましょう。見ず知らずの子どもたちが一緒になり、逃げる魚を捕まえ、魚を忘れ砂山を一緒に作ったり、、、the blue gardenは、海と魚、白い砂を通して自然に人の繋がりを拡げます。
感想
魚を追いかける子ども、砂山を作って遊ぶ子ども、それぞれに楽しみ方を見つけて遊んでいるのが印象的でした。この作品は砂場に泳ぐ魚のインタラクティブな反応を楽しむことが仕組みとしてありますが、その仕組みの体験を強制させるのではなく、自然に砂場で遊んで欲しいと思っていたこともあり、子ども達のさまざまな反応が非常に嬉しかったです. この作品はインタラクティブアートとしての位置づけとなっていますが、コンピュータを使った仕組みは二の次として、まずは砂場で遊ぶことを目標に制作しました。その付加価値として砂場に魚が泳いでいたら楽しいという単純な動機からスタートしています。私は、砂場にいる子どもたちだけを画像処理から判定し、子どもたちと魚がリンクするようにとこの一点だけのクオリティを上げることに集中しました。その事で砂場で好きなように遊ぶ子どもたち、その子どもたちと好きなように泳ぐ魚たちが楽しい空間を作り上げてくれたように思います。 今回制作したシステムは設置が困難な場所であっても環境の大枠の条件さえクリアすると、その誤差を吸収できるシステムのプロトタイプの実証実験としても非常に有用なデータが取れました。 このような場を提供していただいた汗かくメディア、スタッフの方々、なにより一生懸命遊んでくれた子どもたちに感謝しています。ありがとうございました。