男性はほんの一握りで、まだまだ「女性の仕事」と思われている保育士(※)。そういう仕事をあえて選んだ加藤さんに動機を尋ねたら、「よく聞かれるんですよね」と言いながら答えてくれた。
「子どもの頃、働いていた叔母の子をうちで預かり、その子の面倒をみていたこともあって、小さい子の世話をするのが好きだった、というのが一番大きな理由かな。普通のサラリーマンになる気は全くありませんでした。大学に入ったばかりの頃までは、福祉関係か保育か迷っていたんですが、勉強していくなかで、こう言うと語弊があるかもしれませんが、未来のある子どもと関わる方に魅力を感じたんです」。
さらに「クラスを受け持って、一人ひとりの子と信頼関係をつくっていける、というのがいいのかな。学校だといじめなどの問題も出てきて複雑だけど、そういうものがまだない無垢な子どもたちとふれあいたかった。何も知らない子たちだからこそ、責任が重いとも言えますが」。
「保育は男性に向かないのでは」という一部の考え方に対しては、「男か女かは関係なく、経験や人柄が大事だと思います。ある意味ではぼくの場合、男らしさがないというか、子どもに対してもっと厳しくした方がいいという見方があるかもしれません。でも、なるべく子どもを型にはめたくないから」。
加藤さんに対する保護者の反応は、最初は話しかけにくそうな雰囲気もあったそうだが、慣れれば冗談も言い合うように。子どもたちも、なぜか男の子が身構えるような様子を見せたようだが、それも「最初だけ」と加藤さんは強調する。
上司として加藤さんを見守る伊左治涼子園長は「いい保育の条件は、子どもへのきめ細やかな配慮と理解、そして保護者との連携。女性保育士のまねをするのではなく、遠慮せずに自分の持ち味を生かしてほしい」と励ます。
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