子どもの経験のため、大人はガマン。
ケース1
遊んでいる子どもに干渉したり、逆に無関心だったり。親は、子どもの遊びにどのように関わっていけばいいのか?
編集部  まずお子さんの年齢をご紹介いただいてから、ケース1についてのお考えや体験をお聞きかせください。

深田さん  うちの子は14歳と9歳です。私は、子どもにダメバリヤをいっぱい張り巡らしてきたんですね(笑)。だから、子どもが集団生活に入ったときに、覇気がないというか、ダイナミックさがないというか…。私がもっと黙っていればよかったなと反省しました。

高橋さん  11歳の子と9歳の双子がいます。私がいま気になっているのは、家の近くにあるマンションの駐車場でボール遊びなどをする近所の子どもたちのことなんです。車が出入りする場所ですし、転がるボールを追ってすぐ横の車道に飛び出すこともあったり。危険だと思っていつもハラハラ見ていますが…。

深田さん  私は、よその子にもいけないことはいけないと言ってきたんですが、「あそこのおばちゃんはうるさい」という共通 認識があるから聞いてくれる。でも、注意してやめるかどうかは、子どもに任せるしかないんじゃないかと思います。

生田さん

 子どもは19歳・16歳・12歳の3人です。だいたいお母さんはうるさいもんですよね(笑)。男親も子どもが小さいときにはそういう面があって、私も自分の子どもにはガミガミと言ってきた方です。でも、ほかの子どもたちと一緒にデーキャンプをしたりしたときには、作業が忙しいですから細かいことまで言う余裕がありませんでしたけど。


脇坂さん  子どもは5歳と1歳です。私は、子どもが遊んでいるとき、危険なことだけはしないように伝えて、それ以外は極力やりたいようにさせています。だから、口は出しませんが、子どもたちのやりとりにはアンテナを張り巡らせています。
 この前、うちで上の子が友だちと一緒に遊んでいるときに、積んであったふとんを引っ張り出してきたんですね。そのままやらせておいたら、そこから遊びが発展してお医者さんごっこをしたり。目をキラキラさせて、ふだんは見せないような顔をして、楽しそうに遊んでいました。ただ、こういう遊びをお友だちの家でやり出した場合には、止めに入ります。親同士がわかりあっている関係ならいいんですが。

編集部  子どもの遊びには、親同士の関係が影響してくるという話が出ましたが、ほかの親たちと一緒に子どもの遊びに取り組んでこられた小島さんは、親同士の関係づくりや遊びへの関わり方について、どのように考えていらっしゃいますか。

小島さん  「どんぐり」の親たちは、子どもにこんな遊びをさせたい、こういう場を提供したいという共通 の価値観を持っています。もともと、子どもを幼稚園に入れずに、自然の中でいろんな体験をさせる自主保育をしてきた仲間たちで、話し合いを重ねてお互いに理解し合って活動してきました。
 「どんぐり」の基本方針は「ケガと弁当は自分持ち」なんですね。ケガをしても、それは子ども自身の責任だと親にも伝えます。そうでないと大胆な遊びはできませんから。もちろん注意もするし、保険にも入っています。子どもを見ていると、放っておいても大ケガはしないだろうという子とそうでない子とが、徐々にわかってきます。ちょっと心配な子の場合は、ずっと見ていて「こうすると大ケガをするからダメ」と注意します。
 子どもは少しずつ経験しながら、危険かどうかを自分で判断する力をつけていくと思うので、大人は多少の危険はガマンして見守ることが大事だと思います。  また、お友だちの家で遊ぶ場合、「迷惑かな」と思って止めるのはいいのではないでしょうか。世の中にはいろんな価値観を持つ人がいるわけですから、同じことをしても許される場所もあれば、許されない場所もあると、子どもに伝えることは必要だと思いますね。
子ども同士のふれあいには親同士の理解が大切。
ケース2
子どもたちが遊びに積極的に関わらず、友だち同士のコミュニケーションも上手にとれない。親はどう対処したらいいのか?
脇坂さん  上の子は少しずつお友だちと遊べるようになってきたところですが、子どもの中には、みんなで一緒に遊ぶのが好きな子もいれば、ひとりでいろいろ想像しながら遊ぶのが好きな子もいますよね。だから、必ずしも積極的にほかの子と関わりなさいと言う必要はないと思うんです。ただ、子ども同士がふれあえる場所を用意してやるのは、親の役目なのかなと思います。

高橋さん  うちの双子たちは仲がいいんですが、学校ではほかに特定の友だちがいないようなんです。心配で人に相談したら、「双子同士の仲がよくて、ほかの子が寄りつきにくい雰囲気があるのかもしれないけど、仲が悪いよりいい方がいい」と言われて救われたことがあります。クラスの輪の中には入っていけるようなので、それでいいかなと思いますし、学校の中のことまで親は対処できませんよね。友だちが必要と思えば、自分から声をかけていくだろうから、その時期を待ってあげればいいかなと思っています。

深田さん  親の中に、子どもにはこんなふうに遊んでほしいという夢があるかもしれませんが、そのとおりに遊んでいなくてもいいと思うんですね。私も最初の子のときには、ほかの子とコミュニケーションをとっているかとか、私のやり方は間違っていないだろうかと考えながら、真剣に子どもの様子を見ていました。でも、だんだん肩の力が抜けてくると、広角レンズで見られるようになったし、一喜一憂しなくなりました。

生田さん  子どもたちは多様ですから、友だちをつくるには、いろんな子どもがいる方が自分とフィットする相手を見つけやすいのかもしれませんね。

脇坂さん  話は変わりますが、友だちと公園に来てるのに、ゲームばかりしている子どもたちを見ると、とても不思議に思えます。

生田さん  大人も下を向いて携帯電話ばかりさわっていて、寂しいよね(笑)。

深田さん  公園でゲームをしている時でも、大人が「みんなで遊んだ方が楽しいんじゃない?」と声をかけ、きっかけを作ってやると、ゲームを置いて遊ぶこともありますよね。けっして、体を使った遊びの楽しさを知らないわけじゃないですから。

小島さん  子ども同士のコミュニケーションづくりをするにも、やはり親同士の仲間づくりが大切だと思いますね。たとえば、知らない親同士だと、砂場で子どもがおもちゃを取り合えば「ダメよ」と言うし、ケンカが始まればすぐに止めてしまう。そうすると、コミュニケーションを経験するチャンスがなくなってしまいます。だから、ケンカもある程度はやらせてあげられる環境を保障してあげたいですよね。
 ケンカをして、もしどちらかが泣いたら、泣かせちゃった子には「あの子、取られて悔しかったみたいだよ」と話し、泣いてる子には「悔しかったね。いやだったら、いやと言ってもいいんだよ」と伝える。問題をどう解決していくかは、小さいころから体で覚えていくものですから。そのためには、親同士の間で「ここまでは許そうね」と認識し合うことが必要ですね。