PROFILE 笠井 信輔 (かさい しんすけ) 1963年、東京生まれ。フジテレビ 局アナウンサー。朝のワイドショ ー「ナイスデイ」のメインキャス ターとして視聴者の好感を集めて きたが、現在は朝8時スタートの 新番組「とくダネ」の情報キャス ターとして活躍中。5才と1才の 2児の父で、笠井夫人もテレビ東 京のニュースキャスター。著書に 『ボクの出産日記』。 |
休みの土・日は私が、水・木は妻が子どもをみています。休みがすれ違うことに私は戸惑ったんですが、意外に妻とお義母さんは「子どもと一緒にいるにはその方がいい」と。ベビーシッターを頼もうかとも考えましたが、異様に高いのでやめました。そのかわり近所に住むお義母さんの友だちに、いくらか払って週に2時間来てもらい、その間、お義母さんはちょっと気を抜く。幼稚園の送り迎えも、近所の人にアルバイトで車での送迎をお願いしています。 お義母さんと同居するとき、妻が育った町に新しく家をかまえたので、昔からの知り合いが多いんです。私達は身内や地域の人に助けてもらいながら、綱渡りをしているという感じです。 |
来年行く小学校に関しても、私は今の公立校には問題が多いと感じてたから、私立の方がいいと思ったんだけど、妻は「そんなに心配しなくてもいいんじゃないか」って。最終的には公立に通わせることにしたんですけどね。 子どもにとってダブルスタンダード(二重の規準)はよくないと言いますが、うちの場合はお義母さん、妻、私の言うことが違うトリプルスタンダード。でも無理に合わせることもないと思う。なぜなら、多様な価値観のなかで育つことは、何がいいかを自分で学びとる良さもあるし、世の中、混沌としてるから別にいいのよと思っちゃう。たとえば私が優之介を映画に誘ったら、「ママ(お義母さん)が行っちゃいけないって言うから行かない」と自分なりに判断する。それでいいんじゃないかと…。 息子たちは私と遊んだ翌日に熱を出すことが多くて、「過激なことはやめて」と言われるんだけど、「わかりました」と言いながら、土日は私の独壇場なので好き勝手なことをしてしまうんですよ(笑)。ただ根底ではすり合わせが必要で、それは一緒に生活するなかで「あうん」の呼吸でわかります。 |
また母親が子どもとベッタリじゃない方が、子どもの視野を広げることにもなると思うし、もっと言えば、これからの世の中はお父さんもお母さんも働くのが当たり前になってくる。ただ、それを実現するには身内や地域の協力がいる。社会のサポートを得るにはまだ時間がかかるけど、声をあげていくことは必要で、私が生番組を休んで立ち会い出産したのも、だれかがやらないと変わらないからなんです。 私もまだ「家事をやってあげてる」という気持ちがどこかにあって、それを口にすると妻から「それならやらなくていい」と言われます。女性の価値観は大幅に変わってるけど、男の方は少しずつしか変わってない。そういう意味では、雑誌や新聞にのる家事や育児に積極的な最先端の男たちの物語を夫に聞かせて、「みんなやってるのよ」というのは逆効果。ほめてやらせて、経験させることが大事ですね。 夫がちゃんと子どもの面倒を見てるか、心配かもしれないけど任せて、妻はその間、友だちと会うとか映画を見るとかして、自分を解放しないとね。うちの妻は私が帰ってきたら「お父さんにオムツ取り替えてもらってないの?かわいそー」って言うんだもん(笑)。でも、そういうことが大事と思うわけ。 |
自分が育児をしていることはあまり会社では言わず、サッと帰る。言うと「またお前、子どものことで早く帰るの?」となる。今の上司たちは、根底に「家庭のために仕事を犠牲にするな」という価値観を持っている世代。それが変わるには、私達の世代が上司にならなきゃダメです。あと10年ですよ。10年だと45歳かあ、まだ上司になれてないかも…15年かなあ(笑)。 私達の育児に「あら、お子さんかわいそーね」と言う人もいるけど、私は「トリプルスタンダードもいける。今に見ていろ」と思ってる。今日やってることがいいかどうか、すぐ答えが出なくてむずかしいけど、だから育児はおもしろい!今を信じて邁進するしかないですよね。 |
●取材日/1999年7月16日 |
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