GRAY GILLESPIE
(グレイ・ギレスピー)さん


国際交流員として知多市役所に勤務し、ニュージーランド文化を市民に紹介する仕事のほか、翻訳・通 訳、英会話指導などを担当。2002年来日。妻・雅子さんと、麗奈アレキシアちゃん(3歳)、海コールちゃん(1歳)の4人家族。知多市在住。
働くお母さんが多い

 ニュージーランドでは、子どもが生まれたあとも働き続ける女性がほとんどで、家事や子育ては夫婦で協力してやります。プライベートな時間を大事にする国なので、会社も男女に関係なくあまり残業させることはありません。家で夕飯を食べ、子どもが寝たあとは夫婦でゆっくり過ごします。仕事のつきあいで飲み会やゴルフに行くことはなく、会社のパーティに出かけるときは家族と一緒に行きます。子どもは保育園に預けたり、アルバイトのベビーシッターに見てもらったり。その間に、夫婦だけでパーティや映画を見に出かけたりします。保育園は、親が働いていなくても預けられます。
 お母さんだけが、子どもにつきっきりでいることはあまりないですし、子どもを預けてお母さんたちだけで遊びに行くことも普通です。うちの奥さんがニュージーランドの家に来たときも、嫁ではなく新たに娘が増えたという感覚で、アドバイスはしますが、若い家族に対して口出しはしません。日本に来てから、日本のお母さんはいつも子どものそばにいる“エンジェル”でないといけないんだなと、考え方が違うことがわかりました。

多民族社会で育つ子ども

 子育てで一番大事なのは、子どもの独立心を育てることだと考えています。だから、生後3カ月ぐらいから、親とは別 の部屋でひとりで寝かせるんですよ。最初は泣いたりしますが、慣れれば子ども自身もそういうものだと思いますし、親も子どもの寝かしつけに時間を取られず、自分の時間を持つことができます。学校の準備や身の回りのことも、子どもに任せることが多いですね。
 ニュージーランドは多民族国家で、私の友だちも子どものころから、カンボジア人・中国人・フィジー人などいろいろでした。お互いに外国人という意識はありませんが、文化の違いは感じています。たとえば、先住民族のマオリ族に対しては、頭をなでると失礼になるんですが、私は頭に触ってしまってすごく怒られたことがありました。そういうマナーの違いも、子どものころから肌で感じて自然に理解するようになっていきます。

自然や地域の中で子育て

 ニュージーランドでは、日本の保健センターにあたる「プランケットセンター」が地域ごとにあるので、行きやすいですね。保健師さんが子育ての相談にのってくれたり、しつけのアドバイスをしてくれたり。ビデオセミナーで、寝かしつけ方やご飯の食べさせ方なども教えてもらえます。また、疲れているお母さんが無料で休憩できるスペースもあるんですよ。
 子どもは地域の中学校・高校へ行くので、日本のように受験や“いい学校にいかなくては”というプレッシャーは感じません。その代わり、学校によってはA・B・C…と学力別にクラスが分かれ、頑張れば上のクラスに上がれます。大学は、あまり成績が悪いと入れない場合もありますが、ケンブリッジやオックスフォードのように、どこかの大学を特別視することはないですね。ふだんも宿題がないので、家に帰ってからはテレビを見たり、友だちとでかけたりして自由に過ごします。
 ニュージーランドには、自然の豊かな公園がたくさんあり、休日は家族みんなでピクニックをしに行ったりします。夏は夜9時ごろまで日が沈まないので、“夜のピクニック”をすることもあります。また、カフェの中には、裏庭に砂場があるお店もあり、子どもを砂場で遊ばせながら、お母さん同士でお茶を飲むこともあるんですよ。