フランスでは、
お父さんが教育の責任者なんです。
M. Jacques FRANCOIS
(ジャック・フランソワ)さん


フランス語講師。アリアンス・フランセーズ愛知フランス協会勤務。1996年に来日し、日本人女性の雅子さんと結婚。瑠可くん(4歳)と南海ちゃん(2カ月)の2人の子どもを持つ。名古屋市在住。
子どもと過ごす時間がたっぷりある
フランスのお父さん。

 フランスでは、一般的にお父さんが子どもの教育に責任を持ち、いろいろ決めることが多いですね。僕が子どものころも、家で子どもの世話をしていたのは母でしたが、教育の責任を持つのは父でした。夫婦共働きが増えた今も基本的にそれは変わりません。フランスの平均労働時間は週に35時間なので、お父さんも子どもと過ごす時間がたっぷりあります。平日の夜は、子どもの宿題を一緒にやって、そのあと少し遊んだり、土曜日は買い物、日曜日は家族と出かけるという具合です。
 僕が生まれたニースは、自然に恵まれたところなので、外で遊ぶことが多く、あまり家でテレビを見ることはありませんでした。休日は家族でビーチに行ったり、山に登ったりしましたね。今はちょっと状況が変わっているようですが、子どもにとって自然の中で友だちと一緒に遊ぶことは大事だと思います。3歳になると、ほとんどの子どもが「エコール・マテルネル」という、日本の幼稚園のような教育施設に通 いますが、費用は無料で時間は朝8時半から夕方4時半ごろまでです。
 日本で子育てをしている僕も、子どもの教育には責任を持っていて、子どもの将来のことを先々まで考えています。ふだんは、夜に絵本を読んであげるのが僕の役割で、子どもと遊ぶときにはジグソーパズルやスポーツをしたり、ビデオを見たりしています。「そうしなくては」という義務感ではなく、疲れているときもありますから、無理をせずに一緒に楽しむようにしています。


すぐに怒らず、
子どもに説明することが大事。

 子どもはよく「どうして?」と質問してきますよね。その場合、すぐに答えを教えることもできますが、そうすると考える努力をしなくなるので、糸口を教えてあげて子ども自身に考えさせることも必要だと思います。
 子どもに注意するときは、「こうしなさい」ではなく、「こうすればこうなるよ。だから気をつけなさい」と説明します。そして、危険なこと以外は「それでもやりたかったらどうぞ」と。やってみた結果が良くても悪くても、それは子どもにとっていい経験になります。そういう意味では、子どもも自分で責任をとるべきだと思いますね。
 何回も説明しても言うことを聞かないとき、たとえばおもちゃを片づけないときには、そのおもちゃを1日とか1週間とか触らせないという罰を与えます。叱り方は、一般的に日本人よりフランス人の方が、お父さんもお母さんもきついと思います。最近は、フランスでもひとりっ子の家庭が増えて、親が甘くなっていることが問題ですが、それでもたぶん日本人から見ると甘くはないでしょうね(笑)。
 大人と子どもの考え方は違うから、どんなときもきちんと説明することが大事だと思います。もし、説明せずにすぐに怒ったりすれば、子どももすぐ怒る人間になって、友だちとの関係をちゃんとつくれない気がします。親が自分の考えを説明すれば、子どもはそれを正しいかどうか判断できなくても、親を信頼して納得してくれる。だから、親子の信頼関係は大事で、そのために親も子どもとの約束は守らなければいけませんね。