M.Ashraf HOSSAIN
(エム・アシュラフ・ホセイン)さん
Kamrun NAHAR
(カムルン・ナハー)さん
  夫妻

夫のホセインさんは農学博士で、国際連合地域開発センター・研究員、九州大学大学院比較社会研究科・客員助教授。妻のナハーさんは学童保育所指導員。約11年前に来日し、長女のシュザナ・アキコ・ホセインちゃん(9歳)と次女のシュシャマ・アケラ・ホセインちゃん(1歳)を育てる。名古屋市在住。
お手伝いさんが一緒に子育て。

 日本と同じように、バングラデシュでも主に母親が子育てをしています。でも、核家族が増えて、夫婦ふたりで働いている家庭も多いので、昔に比べて男の人が子育てを手伝うようになりました。家族の人数は全国平均で5.7人ですが、日本と違うのは核家族でも祖父母がいる家庭でも、たいてい住み込みのお手伝いさんが男女ひとりずついることです。だから、子育てはお手伝いさんかおばあちゃんに任せて、母親が働きに出ることも多いですね。女の人は、昔は働いていなかったんですが、今は洋服を作る会社などで働くようになりました。
 男の子は外でサッカーやクリケットなどをし、女の子は家の中でままごとやチェスなどをして遊ぶことが多いので、あまり男の子と女の子が一緒に遊ぶことはありません。町では4歳ぐらいから幼稚園に預けますが、時間は昼12時までです。保育園は少ししかなく、学童保育所はまったくありません。働く女性たちのために、保育園をもっと増やしてほしいし学童保育所もつくってほしいと思います。日本に住んでいる私たちも、バングラデシュに学童保育所がつくれるように、日本のボランティアグループと一緒に、バングラデシュの服などを売るフェアトレードのお店やフリーマーケットを開いて、資金づくりをしています。


“マイホームパパ”がふつう。

 バングラデシュでは、日本のように夜遅くまで仕事をすることはありません。たとえば、銀行で働く人は9時から5時まで仕事をして、必ず6時か7時ごろには家に帰ってみんなで夕食を食べます。また、政府の会社は朝7時半に始まり2時半ごろに終わるので、家に帰ってお昼ごはんを食べる人が多いですね。
だから、子どものことを父親と相談する時間はたっぷりありますし、買い物などのお出かけも一緒に行きますので、父親は家庭のことをよくわかっています。パチンコなどの遊びはあまりしませんし、イスラム教なのでお酒は飲みません。外で遊ぶより、自分の家や友だちの家でホームパーティをして楽しんでいます。同じ市に住んでいたら、必ず毎月1〜2回はパーティを開いたりして、よくコミュニケーションをとっています。

みんなで分け合う心を大切に。

 日本では、子どもが小さいうちから親が「自分で食べなさい」としつけたり、保育園でも服の着替えや片づけなどを自分でさせるのにはビックリしました。私たちも、子どもが自分でできることはさせますが、できる年になってからすればいいという考え方です。早くからさせないのは、バングラデシュの小学校では、体操服に着替えることがないとか、給食がないので後片づけをしなくていい、という理由からかもしれません。学校では勉強だけを教えるんですが、日本のように学校でも「ウソをつかない」「時間を守る」などと子どもたちに教えるのは、いいことだと思いますね。
 小さいうちにやさしく育てれば、「自分が大事にされたように、お父さん・お母さんも大事にしよう」と、大人になったときに思うのではないかという気がします。またバングラデシュでは、子どもの頃から友だちとお弁当を分け合ったりするのが当たり前で、少しのものでも分け合います。だから大人になってからも、友だちとピクニックに行くときには、お互いにみんなの分もお弁当を作っていき、みんなで広げて楽しく食べるんですよ。