作家。1964年愛知県生まれ。17歳のとき『1980アイコ十六歳』で文藝賞を受賞。以来、恋愛小説を数多く発表し若い女性の共感を集める。また名古屋大学大学院で教育心理学を学び、現在、愛知淑徳大学と椙山除学園大学の非常勤講師。1995年、動物写 真家の小原玲氏と結婚し、2児を出産。近著に『子育てのコツは高遠で見つけた』(大和出版)、小原氏との共作に『White Smile アザラシ赤ちゃんのひとりごと』(ワニブックス)など。名古屋在住。


 私には子どもがふたりいて、長男の真斗(まなと)は4歳、次男の海斗(かいと)は2歳です。『子育てのコツは公園で見つけた』という本に書きましたが、近所の公園でいい人たちと出会い、楽しく子育てをしています。その公園のお母さんたちには「みんなで遊ぼう」というオープンな雰囲気があり、体調が悪かった私の代わりに公園に行った「子連れのでかいオヤジ」(堀田さんの夫)のことも受け入れてくれて。そうして、すぐにお互いの家を行き来したり、みんなでキャンプをしたりするようになりました。
 家では子どもと1対1で向き合わなければいけませんが、友だちの家に遊びに行ったときには、子ども同士が一緒に遊んでくれるので、親たちはゆっくりお茶を飲んでお話しできるのがいいですね。4家族で大きな山小屋を借りてキャンプをしたときには、子どもが寝たあとに、親たちだけで寝ころんで星を見たり、コーヒーやホットワインを飲みながらおしゃべりしたり。非日常的な時間を過ごすのは楽しいものです。
 仲のいい友だちには「ねえねえ、私の心の中の黒いものを聞いて」と、かなり開けっ広げに話ができて気持ちがすっきりします。幼稚園で知り合ったお母さんたちにも仲良くしてもらい、私も夫も、子どものお友だちみんなのことをかわいく思っています。
 うちの夫はもともと「子どもはいらない」と言っていた人だったので、真斗が生まれて病院を退院するときに彼が言った言葉には驚かされました。お世話になった看護婦さんに、動物写真家をしている彼が撮影したアザラシの赤ちゃんのポストカードを差し上げたんです。看護婦さんから「こんなかわいいのをもらっていいんですか」と言われ、夫は「もっとかわいいものをもらって帰りますから、どうぞどうぞ」って。私でもそこまで言えません(笑)。
 お父さんは子どもと一緒に育てるものだと思ったので、子どもがお腹にいるときから私は「赤ちゃんが今クシャミした」とか「喜んでる」とか言って、赤ちゃんの人格を強調して、夫が父親としての愛情を持ちやすいようにしました。生まれてからも、夫が初めて赤ちゃんをお風呂に入れたときに「お母さんが入れてるときより気持ちよさそうだねー」とおだてたり。その結果、眠っていた父性を爆発させ、彼を完全にお父さんにしてしまったので、私としては子どもの面倒を見ると同時に、お父さんである彼をフォローする責任もあると思っています。
 「夫婦は互いにセラピストであるべきだ」というのが私の持論で、夫婦は相手の話を聞いてあげなければいけないと思うんです。でも実際は、奥さんがグチを言いたくても、ダンナさんは仕事で疲れて「オレはそんな話、聞いてられないよ」という態度になりがち。ほかに気持ちの持って行き場のない奥さんがダンナさんにそういう態度をとられ、もし何かトラブルを起こしたとしたら、ダンナさんは確実に共犯者だと思いますね。
 とは言っても、実はうちの夫婦にはこの持論が当てはまらなくて(笑)。私は夫の話を聞く気があるのに、残念だなあと思います。でも私の場合は、編集者の方や、私が講師をしている大学の授業に絡めて学生に話せるので、別にいいやと。それに、私にはもうひとつ「そんな夫を選んだのは私」という持論もあるものですから(笑)。
 小さい子どものやることなすこと全部がおもしろかったから、3歳までは子どもを手元に置いておきたいと思いました。観察していると個性の違いが見えてくるものですね。
 真斗は生まれたときから人間の顔をしていて、ほかの動物に似ていると思ったことがないんですが、海斗はゴマちゃんなんです。夫が撮った動物の写 真の中には、必ず海斗の表情や動作に似ているのがあるんですよ。
 真斗のマイブームは、意外にも「稲作」なんです。ホタルの取材をするお父さんについて行ったときに、田植えを見たことがきっかけかもしれません。半年後に取材先の方ができたお米を送ってくださったので、「あのとき田植えをした稲が大きくなってお米になったよ」と話したら、不思議に思ったみたいです。お米に関するテレビ番組やホームページを見ていろいろ覚えたり、実家のおじいちゃんに稲穂を見せてもらったり。幼稚園の花壇作りでは「田おこし、田おこし」と言いながらやっていました。子どもが興味を持つものはどこに転がっているかわかりませんね。
 海斗の方は、公園に行ってもお友だちと遊ばずひとりで石や葉っぱで遊んでいるので、ちょっと心配です。でも考えてみれば、私もひとりでいるのが好きな子どもだったので、この先の変化を楽しみにしようかと。
 子どもはいろいろやっかいで、日頃はつい否定的な叱り方をしてしまうこともあるんですが、「無条件に愛しいあなた」という気持ちで、まず肯定的に見てあげることが大事だなと思っています。
(取材日/2001年12月13日)