アートと遊びと子どもをつなぐメディアプログラム汗かくメディア2009受賞作品公開展示【記録】

終了しました

  • 会期
    2009年9月12日(土)から9月27日(日)まで
◎かみひこうきぐも

[定国伸吾]

作品解説

紙飛行機を上に向かって投げると、スクリーンに線(飛行機雲)が描かれます。飛行機雲は、一定時間経過後に、飛行機雲の色に応じた写真かテキストに変化します。写真は、Flickr(写真共有サイト)から、テキストは、Twitter(ミニブログ)とYahoo関連語から、ほぼリアルタイムに取得しています。 この作品は、アナログでありデジタルでもある遊び場となることを目指しました。 私は、遊び場とは、画一的に遊び方が決定されていない、自由に遊び方を見つけられる場であると考えます。例えば、砂場では、造形し、砂掛け遊びをし、宝物を埋めたりもします。「かみひこうきぐも」を体験する人の中には、飛行機雲を使って絵を描こうとする人、遠くに飛ぶ紙飛行機の特徴を見つける人、あるいはテキストや画像となった飛行機雲と紙飛行機の関係について考え誰かと会話を始める人がいるかもしれません。

作家感想

山型の軌跡が2つ並んだのを見て「うさぎができた。」と喜んでいる子ども。「線がいっぱいかけたら勝ち」「文字が出てきたら勝ち」と独自のルールを作って遊んでいる子どもたち。修行僧のように黙々と紙飛行機を飛ばし続ける子ども。小一時間遊んでいるお父さん。紙飛行機を何個も何個も積み重ねて飛ばす子ども。なんで線が書けるのかについて考える家族。紙飛行機をくしゃくしゃにして投げる赤ちゃん。「大人の方が楽しいね。」というお母さんたち。線がかける度に報告しあっている子どもたち。紙飛行機の色とテキストや写真の関係について考察しているお父さんお母さん。「汗かいたー。」と連呼する子どもたち。‥‥。会期を通して、たくさん方々がそれぞれのやり方でこの作品を楽しんでくれたように思います。砂場とまではいきませんが、遊びの自由度がある遊び場をつくることができたのでは、と感じています。 最後に、準備から会期終了まで温かく見守っていただいた、職員、スタッフのみなさまに、御礼申し上げたいと思います。プロフェッショナル視点の的確なアドバイスやアイデアのおかげで、大変スムーズに制作を進めることができました。

◎感じるポスター

[滝澤和也]

作品解説

「感じるポスター」この作品は、参加者がポスターの中に入って役割を演じる遊びです。 例えば『歯をみがこう』というポスターだったら、参加者はポスターの中に入り「ばい菌」の役割を演じます。それをデジカメで撮影し、印刷するとポスターが出来上がります。 演じるシチュエーション(ポスター)を「火の用心」「自然を大切に」「歯を磨こう」の三つを用意しました。それぞれのシチュエーションに合わせて衣装や小道具が用意されています。 是非ポスターの中の世界で遊んでいって下さい。

作家感想

私は大学の頃に、この「感じるポスター」の原型になる作品を作っていました。 その時のコンセプトは「ポスターの中に入って、役割を演じ、人の気持ちを分かるようになろう。」といったものでした。例えば「自然を大切に」というポスターならば、「切られる木を演じる事で、木の痛みを分かってほしい。自然を大切にしてほしい。」という具合に。 今回の汗かくメディアで作品を作っている時も始めは同じコンセプトでした。 ですが、いざ展示会が始まってみると、子どもや親さんは「子どもがコスプレをして写真がとれる。しかもポスターになる。」といって楽しんでもらえました。実にシンプルなものでした。 遊びにコンセプトはいらないんだなぁ という思いと、無理に作品を役に立てようとしていたのかも、という思いに徐々になっていきました。この作品の面白いところは「仕掛け」だという事に改めて気付かされました。それは自分にとって大きな収穫になりました。 【ポスターの中に入った】という経験が子どもの発想を広げてくれていたら幸せです。 汗をかいて人がいきいきしている素敵なポスターばかりが出来上がりました。 一緒に遊んでくれた皆様に感謝感謝です。

◎Outer Frame

[松前理奈]

作品解説

テクノロジーが進化してく中、ネットやゲームの画面の中では、簡単に別の場所に自分を存在させる事ができるようになった。次々と新たなサイトに辿り着いては、意識だけがネットの中を泳いでいるかのように移動していく。なのに私の身体は座ったまま。「意識」と「身体」が離れている事に違和感を感じました。この作品のモニタの前ではただ見ているだけでは外の世界に飛び出す事はできません。
この作品は液晶モニタが映し出された箱を動かす事で、動きに応じてモニタに映し出される映像が変化していくインタラクティブ な作品です。液晶モニタには、「人」が映し出されています。「人」は、液晶の枠から出る事ができず枠内を動き回っています。鑑賞者が箱を動かすと、映像に映し出される「人」は、モニタの枠から飛び出す事が出来ます。鑑賞者が枠の外に逃げようとする「人」を、モニタの中に入れようとする度に、永遠に「人」は逃げ続けます。さあ、身体を動かして思いのままテレビの外へと飛び出そう。

作家感想

子ども達の「遊び」がコンパクトに進化していく中、私の作品は大きく重さもあり、ゲーム特有の「オチ」のような展開はないのでどんな反応をするのかとても気になっていました。けれど、会期中遊びに来てくれた子ども達は、箱を動かし沢山の汗を流しながらも楽しそうに遊んでくれました。又、子ども達だけではなく大人も一緒になって子どものように楽しんでいる姿がよく見られました。 中には、一人で30 分以上も動かし続けている子もいました。普段のゲームのように「オチ」を求める意識があるからなのか「動かし続けると最後はどうなるの?」と子どもに言われ、「何も起きないよ、ずっと永遠に終わりはないよ」と答えると、黙って画面を真剣にじっと見つめ、それでも飽きる事なく動かし続けてくれる子ども達の姿をみていると、子ども達にとっての「遊び」には必ずしも答えは重要なことではないんだなぁと感じました。汗をいっぱいかき、自分の思い通りにいかないもどかしさを感じながらもつ いつい遊んでしまう子どもたちの姿はとても可愛らしいものでした。

◎≪aru≫ work in progress

[二宮諒]

作品解説

もし目に見えないモノがそこにあるとしたら、私たちはその存在をどうすれば感じることができるのでしょうか。そこには見えないことで感じられる、新たな側面があるのかもしれません。 私たちが物事を判断する上で、視覚からの情報がその大部分を占めているといわれています。 では、あえて視覚の割合を低くすることで、普段とは少し違ったモノの見方を体験できるのではないでしょうか。 《aru》は、実体のないモノの存在を感じさせる為に、影に模したCG(コンピュータグラフィックス)や音を用いて見えない造形物を表現します。 スクリーン上に投影される影のCGに触れることで、鑑賞者に仮想の存在を感じてもらう作品です。 本作品を通して影という格好の遊び道具を再認識し、この作品で得た発想や刺激を、普段の遊びに持ち帰ってもらいたいと考えています。

作家感想

会場では子どもたちが喜色満面の笑みを浮かべ、汗だくになるまで《aru》で遊んでくれました。また、キャッチボールや肩車をして《aru》を楽しんでいる親子の姿も見受けられるなど、子どもだけではなく大人の方にも楽しんでいただくことができたと思います。
《aru》はスクリーンに映った影のCGに鑑賞者自身の影で触れる作品ですが、中には持っているタオルを投げて影に触れたり、独自のルールを決めて遊ぶ子どももおり、私が想像してなかった新しい遊びを見ることもできました。 制作した作品に対し、鑑賞者が反応し、そこで得た発見を次の作品へと繋げていく。こうした、対話のような繰り返しが、作品制作には大切な要素であると感じました。 今後もこのように、作家と鑑賞者が作品を通してコミュニケーションをとり、互いに刺激しあっていけることを願っています。

※プログラム内容は予告なく変更することがあります