誰にでも「失敗する権利」がある。
 中学生の子どもたちが泥んこ遊びを企画したときのこと。いざ準備をしようとしたら、「う〜ん」と考え込んでしまったという。
 「何をどう準備したらいいか、わからないんですね。だから、たとえば『泥んこ遊びするには何がいる?』と問いかけ、子どもの想像力や知恵を引き出すことが必要なんです」と、名古屋市緑区で活動する「こどもNPO」代表の原京子さんは言う。
原さん
 子どもは、やりたいことをたくさん持っている。けれども、実現の仕方がわからなかったり、大人に止められたりして、子どもの力を培うのに必要な遊びの実体験が少ない。冒険して「失敗する権利」だってあるのに…。
 こどもNPOは、こうした現状を変え、子どもが自分の力を信じて、ひとりの市民として主体的にまちづくりや環境改善活動に参画することをサポートする市民団体。子どもも大人も参加できる、さまざまなプログラムを企画・実施している。
 活動拠点は、卓球場が付設された民家「ピンポンハウス」。土・日曜日には、「みどりをつくる子どもリーダー」のメンバーが集まってくる。「子どもリーダー」は、小・中学生が中心となって「緑区をつくる」「みどりを育てる」をテーマに活動。これまで、新海池公園の雑木林の手入れと焼き芋大会、大高緑地公園での「愛知都市緑化フェア」などに取り組んできた。現在は、大高緑地公園で田んぼづくりという長期計画が進行中だ。
 ある土曜日にピンポンハウスをのぞくと、子どもたちが「こども新聞」や地域通 貨「ピンポン券」などを議題にミーティング。新聞作りの話し合いでは、「新聞社に勉強しに行く?」と大胆な意見も飛び出す。また、ピンポン券の扱い方について“紛糾”すると、「お金は争いのもとだ」とクールに言い放つ子も。ボランティアの大学生らが話し合いを見守り、時々さりげなく助言する。

「みどりをつくる子どもリーダー」の話し合い

大高緑地公園の田んぼづくり

子どもの未来は、子どもの手で。
 子どもの社会参画と言っても、一足飛びには実現できない。まずは、子どもが持っている力を引き出すことが必要だ。
 原さんは「大人がありのままの子どもを認め、子どもが自分自身を好きになることが第一歩。そうすれば子どもは自信を持って生きることができ、それが自己実現や社会参画につながっていくと思うんです」。
 自分を好きになり、自信を持つことは大人にとっても大事なこと。大人が自分のやりたいことを実現し、その喜びを知ってこそ、子どもの心に火をつけることができる。
 こどもNPOでは、「自分の内なる力とは」「それを阻むものは何か」などを考えるプログラムとして、幼児を持つ親対象の「親子のびのび講座」や、小・中学生を持つ親対象の「コミュニケーション講座」を開催。また、子どもならではの発想や視点を社会に生かすために、サポート役である大人に必要な認識・役割・手法を学ぶ「子どもサポーターセミナー」なども開講している。
 まちづくりや環境づくりには長い時間がかかる。これから取り組む地域プロジェクトが実現するのは、今の子どもたちが大人になるころだ。それを見すえて、子どもの未来づくりに子ども自身の考えや行動を生かそうというのが、こどもNPOのスタンスである。
特定非営利活動法人 こどもNPO
子どもに関する活動を続けてきたメンバーが中心となり、「子どもの社会参画」をテーマに2001年3月にNPO法人設立。自主保育や遊び研究のグループなどの活動を下地に、緑区に子どもの居場所をつくろうと2003年4月に「ピンポンハウス」をオープン。子ども中心のプログラムとして、「みどりをつくる子どもリーダー」のほかに、自然体験を通して命のつながりを学ぶ「アースキッズ」や、長期休暇に開催する連続講座「子ども自然クラブ」がある。

ピンポンハウス
名古屋市緑区作の山町6
TEL&FAX 052(896)4295
070(6292)2887
ホームページ http://www.kodomo-npo.or.jp